「 魔法の手 」
9月に入って、何度か台風も通り過ぎ、そろそろ涼しくなってきてもいい頃なのに、
現実は相変わらず蒸し々と暑い日が続いていた。
暑さを避けて早朝から畑に出て、これから野菜の種を撒く新しい畝作りをしていたそんなある日。
その畝の中ほどで一呼吸置こうと手を止めていた私の目の前の土が、突然もくもくと盛り上がり、
いきなりポコッと何かが顔を出した。
マンガならここで驚きのあまり腰を抜かすところだが、まだ眠気が抜けきれずにいた私は、
夢でも見ているような気分も手伝い、汗を拭こうとタオルをとった手を宙に止めたまま、
身動きもせずそいつの出現を受け止めた( 固まったと言った方が正しい )。
( ははは・・ まさか・・ ピーターラビットか?・・ んな訳ないよな )
それは確かにウサギのようだった。
そのウサギのようなそれは、体を半分地面に出すと、大きな優しい眼で私をジッと見つめ、
「あ・・ あの・・ お願いがあるんですが・・ 」と口ごもった。
ひと時かすかな風が通り過ぎ、溜っていた何かがいっきに飛び出した。
「 はぁ???〜〜! 」