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Inside Farming Vol.79



2001年の農業を振り返る


  農業の分野での昨年(2001年)の大きな出来事は、はやりセーフガードと狂牛病であったろうか。デフレ不況の影響も大きかった。
 
 結局セーフガードは本発動されず民間協議にまかされる形となった。この決着には賛否があるだろうが、この問題が農産物流通の国際化の中で国内農業の行く末を考えさせられる出来事であったことは確かだ。結局、日本国内における食糧の安定供給というものは国内農業による安定生産・供給でなく、自由貿易社会の中で、いかに安定した食糧輸入を確保するか、へ移行しているということに、遅ればせながら気づく。
 
 輸入農産物の影響なのか、国内経済の低迷の影響なのか、とにかく農産物価格もデフレ傾向であり、農業に携わる者を直撃した。価格が下がっても個人経営の農業では諸経費を削ることができないから、利益水準は価格の下落の数倍は下がってしまう。こうなってくると農産物はもう、超高品質品の贈答用途、レア作物、ニッチ作物などの付加価値商品、または体力勝負の薄利多売でしか生き残る道はない。従来型の”地域のみんなで一緒に頑張ろう”では生き残れないのかもしれない。

 そして狂牛病。こちらは食の安全性を考えさせられるとともに、一旦流布された食品に対するネガティブなイメージを払拭することがいかに難しいかを印象づけた。病気発生後の当局の対応のマズさが現在の消費低迷に拍車をかけたことも否定できない。

 同じ農業でも畜産は畑違いのため、浅薄な知識で狂牛病については言及できない。そこで同じ町に住む畜産関係の友人の主張を引用しておけば「二頭目、三頭目の狂牛病は全頭検査体制がしっかりしたから検出されたものです。だから、現在市場に出回っている牛肉は安全であるという事を分かって欲しい」との事。
 また、出荷計画に合わせて牛の体調や体重、肉質を調節しているために、需要低迷で計画どおり出荷できない現状では、通常出荷の場合に比べてどうしても肉質が落ち価格はさらに低下してしまうし、出荷が延びた分の飼料代もかさんでいる、とも訴えていた。畜産農家に直接話しを聞けば、とにかく国策レベルで抜本的で明確で説得力のある対策が早急に必要!と痛感する。

 経験側からいうと、農産物は理由はどうであれ一度価格が下落してしまうと高値に戻すことがたいへんに難しい。また、作物のシーズン初めの商品が高値で取引されればよいが、初めから安値で取引されてしまうとそれ以降値上がりを期待することもなかなか難しい(供給量の激減等がない限り)。デフレでその傾向は一層強まっているように思う。

 とにかく農業にとって本当にたいへんな時代になってきた・・というのが昨年の実感だ(農業に限ったことではないでしょうけれど・・)。
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