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Inside Farming Vol.70 (Japanese)



NEW YORK STATE OF MIND

   マンハッタンの南端にあるサウスパークで自由の女神を飽きるまで眺めた後、彼女を背にして右前方に歩いていくと、そこはもうウォール街。サスペンダーをしたちょっと太っちょのディーラーが足早に通りを横切る。NY証券取引所は観光客が並んでいるからそうだと判るものの、外観は世界のマーケットの中心だと主張するそぶりも見せない落ち着いた建物に見える。品のいい小さな協会が近くにある。道を左に折れてしばらく歩いていくと、そこは天辺が見えないくらいのツインタワーがそびえたっている。あまりに高いビルだから、下からそのタワーを見上げてみても大きさを把握できない。ツインタワーといえば、やっぱりマンハッタン周遊遊覧ヘリコプターから見た、夜景の中で凛々しく輝くツインタワーだ。

 私がNYに行ったのはもう10年以上も前だ。他の何処の都市でもなく、ずっと憧れていた場所がNYだった。だからよけいに、ということもあるのかもしれないが、このテロ事件は私には心底ショックだった。
 
 旅客機が第一のビルに突っ込んだという一報に驚いてNHKを見ていたら、なんと、その中継の最中に、もう一機の旅客機が第二のビルに突入する瞬間がLIVE中継された。何が起こったか瞬時には理解できず、体が硬直した。翌日見たビルが崩れる映像には更に言葉を失った。まさか、崩れるなんて!そしてビルは消えてしまった。
 でも、私が本当にショックだったのは、崩落前、火災の煙から逃れるために高層ビルの上位階の窓際に集まっている人々を捉えたクローズアップ映像(写真)だった。崩落するビルの中には本当に何千人もの人が居たのだ。なすすべも、逃げ場もない。それを見たら背筋が凍り言葉も出ない。テロ事件のあった日(9/11)からもう2週間以上経つが、瓦礫の下敷きになった人々の人的被害はまだ広がっている。被害に会われた方々、および、その関係者の方々には、かける言葉もない。ただ祈るのみである。
 
 反米テロだという。アメリカに対する戦争だという。ブッシュ大統領は民意を喚起するあまり会見で"WAR"を何十回と連発している。湾岸戦争の父に続いてまた戦争の当事者になろうというのだとうか?テロ直後の世論調査では米国民の80%が報復戦争に賛成していると報道されていたが、この調査は本当だろうか?直接的に被害に遭われた方々の心情を考えれば、愛国心に燃える米国民のこの反応も当然なのだろうか?

 とにかく、事件以来の数日間は恐怖を感じていた。無差別テロに対する恐怖もある。さらにその一方で、報復戦争反対という声がどこからも聞かれてこない恐怖。マスメディアも既にアメリカの報復戦争が前提の報道を繰り返すばかりに見える。第3次世界大戦へと発展してしまうかもしれないのに(当然日本も無関係ではいられないのに)。
 幸い2週間が経過しても武力行使はまだない。米国も、激情に流されず、犯罪の証拠を集めて法律に則って行動しようとしているようで、少しだけホットする(武力行使のない新しいカテゴリの戦争は既に潜行して始まっているのだろうが・・)。米のインターネット社会では反戦キャンペーンも始まっていること知って、また少し安心した。

 民間人を巻き込む無差別なテロという行為自体は100%悪い。でも報復戦争という行為も肯定できない。それならば、どのような解決方法があるの?とか、このままでいいのか?とか、被害者の気持ちはどうなるんだ!と言われても、私には全く答えがない。ただ平和であって欲しいと思うだけである。 
 
p.s.なんとなく朝からビリー・ジョエルのNEW YORK STATE OF MINDを口ずさんでいたその日、アメリカの4大ネットワークでテロ被害復旧支援チャリティ番組が放送された。そこで久々にビリーを見て、違った意味で少しショック。半引退状態とはいえガラリと風貌が変わってしまい、牧師さんのようだった(チャリティ番組ゆえかもしれないが)。私が青春時代大好きだった頃から既に20年近くが経過してしまっているんだな・・・もうあの頃のようにピアノの上によじ登ってGパンにジャケット姿でノリノリ(古い!)で歌う姿は見れないんだな・・と思うと、私も年をとる訳だと、しみじみしてしまいました。

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