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Inside Farming Vol.57 (Japanese)



雹被害その後・・被害にあった若い農業経営者たちの5ケ月

  昨日、お隣村で林檎栽培をしている農家の「ふじ」の収穫のお手伝いに行って来た。例年なら自分の園の収穫が忙しくて、11月下旬に他人の農園のお手伝いなど考えられない。しかし今年は雹の被害で林檎が全滅。収穫する林檎が全くない状態なので、忙しい仲間からお呼びが掛かったのだ。他人の果樹園を見るという事は、それだけでもかなりの勉強になるものだが、そこで実際に仕事をするとなるとより一層多くの知識を得る事ができる。林檎の木の形、果実を実らせる場所や数、作業の手順、バイトの管理など参考になる事ばかりだった。
 それは普通の年では考えられない本当に貴重な体験だったと言っていい。加えて、久しぶり(まさに一年以上ぶり)に林檎の収穫を体験する事ができた事も喜びであった。私も林檎栽培は10年選手。なれた仕事は人並み以上にこなす事ができて、満足!満足!(ああ・・それに比べて特許事務所の仕事は、まだまだ半人前以下だなあ。頑張ろう!)。
 
 ところで、あっという間に雹の被害から5ヶ月も経っている。このへんで雹の被害にあった私の周りの若い農業者の動向をまとめてみよう。

 まず第1のグループ。一部の畑や果樹園は雹の被害にあったが、全滅は免れた友人たちである。彼らは残った作物を一生懸命生産し、来年への英気を養ったようだ。友人の一人は「耕作面積が減ってしまったため生産量が激減した事と、作業効率にスケールメリットが出無くて大変だった」という一方で「余裕を持って仕事ができた。自分と家族の時間を十分に持てた」と振り返る。今年の林檎の生産・販売状況に関して尋ねると「今年は本州に上陸する台風が一つも無く、無事に収穫を迎える事ができた。蜜の入り方や玉の肥大も順調で、価格も安定していた。ただ収穫できる量が少ないので私のところも贈答林檎の販売は中止した」そうである。

 第2のグループは私のように、農作物が全滅したために、アルバイトに出かけた友人たちである。周りを見渡してみると、多くの農業後継者は就農前に会社員などを経験している場合が殆どである。そのためか「俺は事業主だから他人の世話にはならん!」などという発想の人間は少ないようで、かつての職場を頼ったり、または求人広告などを見て新しい職場に通うなど、フットワークの軽さを見せている。
 永年作物の林檎の栽培が専業の私のように「来年の栽培にも被害の影響がある」と考えたり、「このような天災の恐怖を感じたまま農業を積極的に展開していくのは不安だ」として少なくても1,2年の雇用を前提に仕事を探した友人は殆どいなかった。一方、単年度作物であるスイカ栽培農家の友人は「年内」とか「来春の仕事が忙しくなるまで」の期間でバイトしているようである。そんな友人の一人は「バイトは来年1月まで」として、その後はスイカの苗作りを開始するという。来年はまた0から出なおせる単年度作物ならではの”割り切り”がちょっとうらやましくもある。

 バイトに出た仲間の中には、既に「来年の農閑期もまたバイトに来て欲しい」と雇用主から声をかけらた者もいる。雹の被害で、かえって収入の道が広がったと喜んでいるようだ。
 さらに、バイトに出た複数の友人の話を聞いていたら「大型免許が役に立った」とか「ホークリフト運転免許のお陰で時給が高くなった」などと「いつ役に立つか分からないけれどもとりあえず取っておいた(友人談)」資格が役に立ってびっくりしたという。私もバイトに採用される時点で資格が評価されたのだ!と考えていたので、皆で「資格は持っていて邪魔にならないね!」と、少しばかり盛り上がった。
 
 第3のグループは、雹の被害にあってしまった畑で、雹の被害以降に新しい作物を作付けした(後作という)友人達だ。雹被害はまだ7月であったから、その時点から栽培しても霜が降りる12月前に収穫できる野菜類、「大根」「ネギ」「インゲン」「白菜」「レタス」「グリーンボール」「白菜」「とうもろこし」などを主に栽培したようだ。
 彼らがなぜ苦労してまでノウハウの蓄積の無い新しい作物にチャレンジしたのか。それは「今は儲かっているスイカ栽培だが、いつ斜陽になるかは誰にもわからない。また、毎年同じ作物ばかりを栽培し続けていると連作障害などの影響も出てくる可能性が高い。だから、今まで栽培した経験がない新しい作物にチャレンジして経験を積む事ができる絶好のチャンスだ!」というポジティブな理由からである(素晴らしい!!)。加えて、この第3のグループの中には、6・7人で集まって共同作業によって大規模な後作をやろうという集団も現れた。今まではそれぞれが事業主であったメンバーがスクラムを組んで、短期ではあるが、一緒に大規模経営を行ったのだ。(これって、そんなに遠くない未来の農業の経営形態になるのではないかなと思うほど、実験的で素晴らしい試みだと思う)。
 
 どうですか、皆さん。波田町の若い農業経営者はそれぞれに頑張っています。普通に生きていれば、自分の生活のパターンや職業をかえたり、新しいことに挑戦するチャンスにはなかなかめぐり会えないものです。そんなチャンスが、外的要因のせいではありますが、今年は波田町の農業者に訪れました。そして多くの農業者が有意義にそのチャンスを利用したようです。
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