Inside Farming Vol.31 (Japanese) 今年の夏の枝豆販売顛末記 今年の夏(1999)は先輩と枝豆を栽培した。昨年の台風で受けた経営的な打撃をこの枝豆で少しでも埋めようという意気込みでチャレンジしたのだ。なぜ「枝豆」?と問われれば”栽培にあまり手がかからない”、”価格が安定している”という”うわさ”を聞いたからだった。 しかし皆さん、甘い「うわさ」には気を付けましょう。実際栽培してみると、なかなかどうして枝豆栽培は大変だった。鳩に種を食べられないようにちゃんと苗を興してから定植したり、干ばつに冠水したり、ジョレンを使って雑草を退治したり、アブラムシの発生に慌てたり・・(無農薬で栽培したかったが、一回だけ農薬を散布した。かなり低農薬。)・・。慣れない野菜作りに腰は痛くなるし、やっぱり作物は実際に作ってみないとその苦労は分からないものだ。 それでも枝豆は思いのほか良い出来で、あとは販売するだけ!となった。 枝豆を栽培し始めた時点では、「市場に出荷する」「居酒屋めぐりをして販売する」「地場直売所(地域の作物を販売する第三セクターのような場所)で売ってもらう」「地域スーパーの店頭(最近は地元農家の作った野菜コーナーなどが流行り)で販売する」などいろいろな販売方法を考えていた。しかし市場に出すには生産量が少ないのではないか?また、出荷するダンボールなど経費が掛かるという事で断念。居酒屋販売は先輩が「冷凍枝豆を安く大量に使っているので私たちの入る余地はない」と調べてきた。結局、先輩は地場直売所に卸す事に、私は地元スーパーに卸すことにした。 先輩の地場直売所はなかなか販売がスムーズだったようだが、私の担当の地元スーパーは厳しい状況が続いた。一日10束ほど販売を委託したものが売れ残るというのだ。スーパーの品揃えを見ると群馬産の枝豆が低価格で競合している。陳列場所も私の枝豆はちょっと分かりづらい場所、対して群馬産は生鮮野菜コーナーだ(考えてみれば当たり前の話ですね。スーパーは自分の所で仕入れたものをまず販売するのが第一ですから)。そんなこんなで一日にして早くも「価格値下げ要求」と突きつけられた。 生鮮食料品は売れなければ腐るだけ。腐らすよりもマシという気持ちで値下げを甘んじて受け入れたが(悲しいほど立場が弱かった!!)、すっかりこのスーパーに販売する意欲は減退した。それにしても先輩の売上は順調なのに私は低調では話にならない。新しい販売先を慌てて探しているところに、ちょうど松本市内で週に一度ある朝市で販売してみないか!との話を頂いた。 朝市ではちょっとお得な束をこしらえてコンパネの上に無造作に積み上げてお客さんを待っていた。スーパーの事もあって売れるかどうか心配だったが、なんと開店から15分ほどで30束ほどが完売。その翌週もその倍が完売できた。その売れ方たるや恐ろしいもので、開店前から朝市にきた奥様方は列を作って枝豆の束を確保する準備をしている。開店と同時にはバーゲン会場さながらの勢いで、あっという間に売り切れだった。運悪く買えなかった奥様には「たくさんあるって言ってたじゃない!」と怒られる始末。・・・・・・・ああ、それにしても・・・・・・・・売り方ひとつでこれほど違うものなのか。 朝市でのすばらしい成功で気分を良くしたものの、なにしろ朝市は週一回しかない。それに対して枝豆の旬はそれほど長くない。そこで収穫時期を過ぎていまいそうな枝豆は(二束三文でスーパーに卸すくらいなら)お世話になった人や友達にプレゼントしよう!という方針に変更した。採算は度返し、それよりも自分が作ったものが喜ばれれた方がいい!という極めて農家的な発想になってしまった。 と、それが、逆に幸運を招いたりするから不思議だ。プレゼントした人から「友人にもあげたいからもっと欲しい」という注文を受けたり、枝豆のお礼にお米や果物、野菜など、エビで鯛を釣るようなお返しを頂いたり。プレゼントにこの辺ではあまり栽培されていない実験的に作った「茶豆」を入れたのが受けたのかもしれないが、自分の作った作物が喜ばれるというのはやっぱり気分がいい。 結局、儲からなかったが、楽しめた。新しい経験も幾つか出来た。 そんな今年の夏の枝豆販売顛末記でした。 Go to Inside farming index page kawai@wmail.plala.or.jp 写真、本文とも Copyright(C) 河合果樹園 |