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Inside Farming Vol.25 (Japanese)



あなたの作ったデータから、あなたは特定される

 Celeron300Aを450MHzにクロックアップして「これで我が家のPCも最新CPUに近い処理能力を獲得した!」と喜んだのもつかの間、巷ではPentiumVだ、Celeronのデュアル化だと、もう次の話題で持ちきりだ。来年の2000年にはPentiumVの動作周波数は733Mhzまで上がるというし、PCはいつ買っても”あーあ(落胆)”というのが世の常だ。
 
 そんな話題のPentiumVだが、目玉の3DNow!対抗の拡張命令SSEよりもPersonal Serial Number (PSN)の方が大きな話題となっている。PSNはネットワーク上での商取引などで個人ユーザを特定したり、不正アクセスを防いだり、というセキュリティ向上のために一つ一つのプロセサにシリアルナンバーを与えてあるという機能のようだが、使い方によってはプライバシーの侵害に当たるのではないかと消費者団体のボイコット運動が起こっている。結局多くのPCメーカーはこの機能をデフォルトでOFFにして出すという。それでも気になるユーザーはPSN機能を確認・設定できるユーティリティを入手しなくてはならないだろう。
 
 CPUメーカーによるパソコン背番号制にちょっぴり恐怖を感じている時に、さらにショッキングな情報と出会った。それはMicrosoft社がユーザーのWindows98のオンライン登録の時に、そのマシンにインストールされている他のMicrosoft製品のシリアルの情報を暗に収集しているというものである。その詳細は「頑張れゲイツ君-マイクロソフト・プライバシ」(私の愛読のWEBエッセイ一つだ)にある。昔からネット関連のあやしいフリーソフトやシェアウエアの中には、ユーザーに明示せずサポート・サイトにアクセスしたり、メール・アドレス等を勝手に作者に送信するものが幾つかあると噂されてはいたが、実際にあると知って”あーあ”だ。

 そして世界中を騒がせたウイルス”Melissa”。感染するとOutlookのアドレス帳にあるメールアドレス50箇所に、感染したWord文書を撒き散らすという症状が出るらしい。もちろん鼠算式に増えるメールはネットワーク全体のメール・システムに対する強力なボムなのだが、それ以上に「文章を意図しない相手に送ってしまう」という症状のほうが、秘密やプライバシを積極的に漏洩させる仕組みが簡単に作れるという恐ろしさを感じさせる。

 幸いにもウイルス製作の容疑者は捕まったが、犯人特定のきっかけがWord文書に含まれるIDだと噂されている(捜査当局は否定的な見解だが)のも興味深い。このIDとは,Microsoft社のWord,Excel,などのアプリケーションで作成されたファイルに、そのマシンのEthernetアダプタに割り当てられている識別アドレスなどから生成したユニークなシリアル番号が埋め込まれるというもので、つまりこれらのアプリケーションで作成されたファイルは製作マシン(作成者)が特定できるというのだ。さらにこのIDも同社に送られている(HotWired参照)という。

 どうですか。あなたが作った多くのデジタル・データやネットへの接続状況が知らないうちに他人のデータベースに蓄積されていくという恐怖。ユーザー登録情報とマッチされて、より正確な個人データが集められるという恐怖。

 これがコンピュータ・ネットワーク社会の未来を暗示しているのかな。
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