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Inside Farming Vol.189


モンブランのボールペン〜タイムスリップしてやってきた〜  


懐かしのシステム手帳
数日前、片付けをしていたら、机の引き出しの奥からシステム手帳が出てきた。これは、私が技術記者として東奔西走し始めた80年代後半に使っていたものだ。スケジュールが書き込まれたペーパーリフィルも残っていて、懐かしさも増す。あれから20年も経つのに、皮製の表紙も金属製のバインダもそれほど傷んでいない。王道の「fILOFAX」ではないけれども、それなりに良い物をチョイスして、大切に使っていたようだ。眺めているうちに、もう一度使ってみようかな・・・・という気分になってくる。

システム手帳と一緒にモンブランのボールペンペンケースも出てきた。こちらは、諸事情で記者を辞めることになった時に、先輩記者が贈ってくれたものである。あの時、先輩記者は、「今ここでペンを折る君にモンブランを贈るのもなんだが、いつかペンを取るときに使ってくれ」と言いながら、これを私に手渡した。先輩記者の言葉に特別な意図はなかったと思うのだけれども、この言葉は私に重く圧し掛かってきた。「記者を辞めた私がペンを取るとき」とはどのような時なのか?と。いったい、どのような状態になったらこのモンブランを使うことを許されるのか?と。これらの疑問に納得いく答えが出るまでは使う気になれず、結局、モンブランは、20年もの間、ずっと保管状態となっていた。

モンブランそんなモンブランを手に取ると、艶のある黒い胴部がしっとりと手に馴染む。適度な重量感が気分を落ち着かせる。これが名品の質感というものなのか。そして、氷河がモチーフだという星型の白いマークが眩しく目に映る。

使いたい。そろそろ使ってもいいのでは・・と素直に思う。こんな気持ちになったはのは、初めてだ。あれから記者として執筆することはなかったけれど、今では、代理人として責任の重い文章を書くようになった。今こそが、あの時の「いつか」なのだろう。モンブランは、その「ペンを取るとき」を見透かしたように、時空を飛び越えて突然に出現してきたに違いない。
そう解釈すれば、先輩記者の言葉の呪縛からも開放される。気負うことなくこの名品を使用できる。そう思うことにして、早速、インクリフィルを充填しよう。(2009/2/1)






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