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Inside Farming Vol.182


六本美ヒルズからの眺め  


世間的には東京ミッドタウンがオープンしたというのに、初めて六本木ヒルズに行ってみた。田舎に住んでいる私にしてみれば、株式分割による時価総額主義を偲ばせる「ヒルズ族」(笑)いう言葉が死語になった今(2007年4月)くらいが、物見遊山には丁度いい、という感じである。

せっかく六本木に来たのだからと、まず、アマンドを確認(笑)。前に来たのは、またアークヒルズが話題の頃だったように記憶しているから、かなりの昔だ。近くに日本IBMのビルがあって、まだ創世記のモバイルPCに関する取材をした覚えがある。確か乃木坂あたりから歩いてきたような・・「1kg前後のノートPCを出す」という話にショックを受けたような・・・・あれから何年?・・(なんと、約20年前)。
今では、当のThinkPadはLENOVOのブランドになっており、時の流れを感じる。ちょうどこの文章を書いている「ThinkPadX41」が日本IBM発の最後のサブノートというわけである。

高い所に登ってみたいというのは本能なのか?。森美術館も見られるというので展望台に登る。そこは驚愕の風景。なんと、東京タワーを少しだけ見下ろしている。人工的な都市を眼下にする人工的な建物の最上階に立って、人間の力の凄さを確認する。こんな所に住んで、周囲を見下ろしていれば人生観も変わるだろうと、思う。

そこで、なぜか、突然に、その展望台からの風景とは全く異なる風景が浮かび上がる。

自宅からビートルで事務所へ通勤する途中の、ちょうど北アルプスの山々を視界に入れながら進む道沿いの風景である。今の時期(4月)だとまだ山肌に雪が深く残っている。朝のすがすがしい青空に雪の白が強くが浮き出している。鋭く悠然と連なるそれらの山は美しい。夏になれば、青空よりも青くそびえ立つ。

この風景は、兼業農家になって今の事務所に通勤するようになってから目にするようになった風景だ。雹で果樹園が壊滅した直後には、失意と将来への不安の中で見てきた。仕事に慣れないときには、苦悩の中で見てきた。幸せな気持ちで見た日々よりそれら不安定な気持ちで見た日々の印象が強いからだと思うけれど、この美しい風景を見ると突然不安に襲われることがある。今、一生懸命生きている自分の不安定さ。人間の小さな営み。変わることがない雄大な風景を前にするからだろうか。

対照的な風景であり、対照的な価値観である。
人の価値観は、日々眺めている風景によっても形成されていくのだ、と感じた瞬間であった。(2007/4/21)


P.S.森美術館に展示されていた「麗子像」に感動。なぜか草間弥生さんの顔が脳裏を過ぎる(笑)。





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