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Inside Farming Vol.151


お酒は薀蓄で飲む


 園主はお酒が嫌いな方ではない。お酒を飲む雰囲気も好きである。気の合った仲間とゆっくり語りながら飲むのが好ましいが、家で家族相手に飲むのも満更ではない。お酒の種類や銘柄には拘らないけれど、そのお酒の由来や銘柄の薀蓄(うんちく)を知って飲むのが好きだ。誰かが(時には自分が)そのお酒について、さも自分の醸造所で作った酒かのように自慢げに語るのを聞くだけで、そのお酒が何十倍にも美味しく感じてしまう。お得なプラシーボ効果である(これって、農産物もそうですよね)。

 それにしても、今回、たまたま誘われた集まりで飲んだお酒は飛び切りだった。かつてドイツの貴族が所有していたとされる古い発泡性のワイン10本(シャンパンの可能性もある)。100年以上も前のものだ。ちょっと黒ずんだ大きめのコルクがビンの口を頑丈に塞いでいるが、ワインの量は少し減っている。中には半分くらいになってるものもある。これも天使が飲んだと言うのだろうか。

 酒のオーナーが留め金を慎重に外して、コルクをオープナーでゆっくりとあける。そして、”おり”をじっくりと濾して、厳かに我々に振舞った。もう炭酸は飛んでしまっているがアルコール分は残っている。5%位はあるのではないか。元は白だったと思われるが、現在は琥珀色。美味しい。シェリー酒のような酸味と甘さ。尖がったところはない。少し梅酒のようだと評するものもいた。まさに世紀の酒を飲む感激。
 瓶のコレクターが日本に輸入したものの一部だという。そう言われて瓶を手に取るとズシリと重い。かなり厚みのある緑色の瓶は、一本一本の形状が少しずつ異なっているようである。手仕事なのか。
 
 そんな猛烈に貴重なワインを普通の酒のように飲んで堪能してしまった(笑)。

 しかし、世の中には酒通、食通という人がいるんですね。この酒のオーナーは、ワインが立っているのを見るのが耐えられないというワイン通。また、この集まりの会場となったお宅の主は、酒に合う料理を自ら手料理しないと気がすまないというこだわり派。この日も、鯛と平目のサラダ、黒豚しゃぶしゃぶ、油に拘ったサクサク天ぷら、クリームチーズと豆腐のレモンのディップ等、趣味の域を超越した本格派料理であった。北大路魯山人とか開口健とかを特別な人だと思っていたのだけれど、それに通じる人って、いるんですね。なんだか、ちょっとうらやましい。

 お開きの後、特別純米無ろ過生原酒「飛露喜」なんていう日本酒までお土産に頂いて帰宅した園主。うーん、この酒も、うまかった!。





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