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Inside Farming Vol.131


農業分野の規制緩和


 2003年7月10日の日本経済新聞の1面の囲み記事が興味深かった。記事は、規制緩和によって開かれる市場は「遅れた産業」ほど大きいと指摘し、その産業に企業が参入することで、いかにGDPが増加するか、という内容である。規制の多い産業で、いままで競争の働かなかった市場として介護、医療、保育、農業が挙げられていた。

 記事中、園主の興味を引いたのは、農業分野に企業が参入することで、農業を輸出産業に転換させることも可能ではないか、というくだりである。
 最近中国では裕福な層が増え、価格が高くても日本産のイチゴや林檎が贈答用として人気なのだそうだ。こうした裕福な層が、中国の人口の1%に達すれば、日本の人口の10%に匹敵する農産物市場が形成されるという。そこで、規制緩和により農業分野への企業の参入を促し、大規模化、効率化とともに、輸出を視野に入れた展開もできるというものだ。

 農業にとって、中国は、安い農産物を輸出する競争相手でしかなかった。しかし、中国を「市場」として捉えることができれば、新たな展開があるという指摘。確かに、企業や企業人にとっては当たり前の視点なのだけれど、中小規模の個人農家には、なかなか持つ事ができない視点だなあ、と感じてしまったりする。そういう意味ではもう少し企業が農業に参入する際の規制を緩和して、産業全体に新たな発想や展開があった方がいいのかもしれない。高齢化が進み、増加する非耕作農地の利用や、田舎での雇用の創出からも、メリットはある。

 でも、かつて、規制緩和によって進出した大型ディスカウント店やコンビニが地元の中小の小売店を廃業に追い込んだのを見ると、資本力のある企業の農業分野への進出は農家にとって相当な脅威であり、先行きが心配になる。その後、その大型店が倒れて、周辺商業地域全体が地盤沈下してしまう現状を見ると、農業に進出した企業が、企業の論理でサッサと撤退する時を想像すると、地域と土地の荒廃は確実で、本当に恐ろしい。

 農業分野の規制緩和をチャンスとして捉える側の人間や企業がある。また、どんなビジネスも競争の中で淘汰され、生き残ったものこそが、真に活力を有する者であり、発展する権利を有しているともいえる。でも、それって、強者の論理なんだよね。

 いずれにせよ、農業だけが規制の下で守られているわけにも行くまい。覚悟しなければ。

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