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Inside Farming Vol.123


農薬取締法が改正されるって、知ってます?


  昨年の無許可農薬の使用・販売問題に端を発して、改正された「農薬取締法」が3月に施行されることになったようです。関係省庁のホームページに公開された内容から要点を整理すると、改正のポイントは以下のようです。

農薬を提供する側にとっては、
(1)無登録農薬の製造、輸入及び販売を禁止する。
(2)違法な販売が行われないよう罰則を強化する。
農薬を使用する側にとっては、
(1)無登録農薬の使用を禁止する。
(2)農薬の使用者が遵守すべき基準を定め、この基準に違反して農薬を使用してはならない。
(3)違法な使用が行われないよう罰則を強化する(今まで無登録農薬の使用に罰則はなかったが、3年以下の懲役または100万円以下の罰金となったようです)。

 法律の内容をよく吟味するためには、用語の定義を理解することが重要となりますから、ここで、農薬取締法における「農薬」の定義についてみてみます。
 第1条の2 この法律において「農薬」とは、農作物(樹木及び農林産物を含む。以下「農作物等」という。)を害する薗、線虫、だに、昆虫、ねずみその他の動植物又はウイルス(以下「病害虫」と総称する。)の防除に用いられる殺菌剤、殺虫剤その他の薬剤(その薬剤を原料又は材料として使用した資材で当該防除に用いられるもののうち政令で定めるものを含む。)及び農作物等の生理機能の増進又は抑制に用いられる成長促進剤、発芽抑制剤その他の薬剤をいう。
 園主は農薬取締法の逐条解説などを読んだことがありませんので、解釈として、どの範囲まで「農薬」になるのかは不見識です。なので、あまり論議を深めることはできませんが「病害虫防除の目的で使用する資材は農薬」として運用されているのであれば、園主が減農薬の目的で、農薬の希薄倍数を高めるため(農薬を薄くする)に添加していた食品添加物であるクエン酸も農薬となります。この場合、クエン酸も農薬登録がないと使用できなくなるということなのでしょうね(クエン酸に農薬登録があるか、現時点では調べていませんが)。殺菌作用のある電解水はどうでしょうか?。よくDIYショップなどで販売されている栄養剤も農薬なんでしょうか?。生理機能の増進作用があるといわれている「何とか酵素」とか「何とかエキス」とか、そういうものも規制されるのでしょうか?。ちょっと、謎です。

次に、「遵守すべき基準」とはなんでしょうか?
 第12条 農林水産大臣及び環境大臣は、農薬の安全かつ適正な使用を確保するため、農林水産省令・環境省令をもつて、現に第2条第1項又は第15条の2第1項の登録を受けている農薬その他の農林水産省令・環境省令で定める農薬について、その種類ごとに、その使用の時期及び方法その他の事項について農薬を使用する者が遵守すべき基準を定めなければならない。
 園主は農薬取締法の逐条解説などを読んだことがありませんので、解釈として、どの範囲まで「遵守すべき基準」になるのかは不見識です。なので、あまり論議を深めることはできませんが、条文の文理上は「使用の時期及び方法その他の事項」が基準として定められているようです。これって、農薬のラベルに記載されている事項のことでしょうかね?。そうすると、農薬のラベルに記載された倍率以外で、例えば、減農薬の目的で、農薬の希薄倍数を高めて(農薬を薄くして)使用することは、違法になるということでしょうか?(そう解釈することには具体的妥当性がないようにも思われますから、違法ではないような気もしますが)。あるいは、ダニ用に登録された薬剤がアブラムシにも効くという効果に着目して、通常よりも早い季節に散布することにより2剤散布するところを1剤の散布で済ますというような手段は違法でしょうね。カルシウム剤などを生理機能の抑制に使う方法などはどうですか?。尿素を添加して除草剤の倍率を下げるという行為はどうですか?。園主にはわかりません。

 法律を理解することは、大変に難しいことです(実感)。また、政令、省令、規則に階層化されているので、実際の運用まで理解することは、その道の専門家でないと、ある意味不可能なのだと思います。ですから、今後の個々の農家の対応としましては、個々の場合について具体的な判断基準が行政から示されるのを待つしかありません。ただ、どのような方法で個々の農家にそれらの情報が伝達されるかは、不明です。

 今後は、農作物の防除体系は知識を有する一部の専門家に一任する方向になるでしょうね。その結果、過渡的には、個々の農家の努力による減農薬栽培は減るかもしれません。また、この場合には、農作物価格の推移とは裏腹に、農薬価格は高値安定に推移していくことが考えられますから、農業経営は厳しさを増すかもしれませんね。
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