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Inside Farming Vol.13 (Japanese)



アダルト・コンテンツはいつまでインターネットを牽引できるか

−警告−このページにはアダルト・コンテンツは含まれていませんが、アダルト・コンテンツをテーマとして扱っています。

ビデオが普及する過程で、アダルト・コンテンツの果たした役割は否定できない。初期のビデオデッキ販売ではアダルトビデオを販促グッズとしてバンドルしていた電気屋さんもいたというから、その影響力の大きさを想像できる。今ではもう「アダルト・ビデオを見る事を第一の目的にビデオデッキを購入する人間」もいないだろうが・・・・。

日本では95年にパソコンのOSがネットワークに接続できる環境を用意したのを機にインターネットは急速に広がった。そしてビデオデッキ同様、個人ユーザーへの急速な拡大の牽引役としてアダルト・コンテンツの果たした役割は非常に大きい。現在でもメジャーなサーチエンジンの検索語の上位はアダルト・コンテンツを探すためのキーワードであるというし、多くのアダルト・サイトのカウンタは軒並み数十万ヒットというのがその証拠だ。

実際のところ私がインターネットを始めた96年頃はよく海外のアダルト・サイトを閲覧していたように思う。電話代を気にしながらの接続のために英語の速読が身に付いた(といっても、そっち方面の表現ばかりだが)のがせめてもの救いではあったが、時間とネットワーク資源をたっぷり浪費した。

96年中頃からか、マスク画像といわれるモザイク処理を施した画像が日本国内のサイトに登場するようになった。デジタル・データにモザイク処理を施したこの画像の特徴は可逆性があること。つまりこのモザイクをかけるためのソフトウエアを利用すればモザイクをはずす事ができるというものだった。その処理が可能な某シェアウエアは約2万人のユーザー登録があり、作者には3000万円の収入があったという。とにかくこの頃はマスク画像の絶頂期で、まさに「インターネット元禄」。業者、個人を問わずアダルト・サイトは乱立していた。国内サイトということをエクスキューズに私も再びネットワーク資源の浪費に手を染めてしまった。

そして97年には、この「インターネット元禄」に冷や水を浴びせる事件が起きる。それは上記マスクソフト作者の逮捕だ(この逮捕、裁判に関連しては刑法学者の主催する「電脳世界の刑法学」が詳しい。事件は異なるがアダルト・リンクについては立花隆の「同時代を撃つ」のページも興味深い)。これを期に国内に乱立していたアダルトサイトは自粛、休業を余儀なくされた。いくつかの業者は海外に移動し合法性を主張しながら運営しているが、ほとんどの業者はインターネット上にコンテンツを置くことはなくなった。ネット上では僅かなサンプルと宣伝(IP公表)のみを行ない、実コンテンツはダイアルQ2回線から直接サーバにアクセスさせて提供するという形にして、表舞台からは消えつつある(ように見える。私の知っている限りではね。Q2したことないけど)。

こうしてみると、私もどうやらコンスタントにアダルト・コンテンツを見ているという実態を露呈してしまっているけれど、自分の中では、もはや「アダルト・ビデオを見る事を第一の目的にビデオデッキを購入する人間」ではないし、もっと有意義なビデオデッキの使い方も知っているよ!という感じだ。そしてネットで1、2年過ごした多くの個人ユーザーの意識も既にその辺(あたり)にあるのではないだろうか(根拠はないけど、そんなムードを感じる。シンクロニシティか?)
平たく言えば「アダルト・コンテンツもたまには見るし否定しないけど、ネット上にはいろいろなコンテンツが山ほどあって、アダルト・コンテンツはその中のたかが一つに過ぎない」ってことだ。今でも「インターネットでアダルト見れていいジャン」ていう揶揄を受けて情けなくなるようなこともあるけれど、その感覚はもうみんなで卒業したい!ってこと。

アダルト・コンテンツがインターネットの牽引役を降り始めた(ような気がする)という事は、インターネットが新しいメディア(媒体)として”こなれ”て来た結果かもしれないし、逆にユーザー(私)がインターネットを新しいメディア(媒体)として少しは”こなせる”ようになった結果かもしれない。そして「アダルト・ビデオを見る事を第一の目的にビデオデッキを購入する人間」がいなくなるまでネットが普及したら、インターネットはメディア(媒体)としてやっと成熟期に入るんだろうなと思う(ちょっと男性的な視点だけど)。

最後に成熟期に到る過程で余計な規制を生まないためにも、アダルト・サイトのウエブマスタは、見たくない人が見なくていい仕組みと子供を守る仕組みを必ず作って!とお願いしときます。

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