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Inside Farming Vol.110


動機づけ先行の精神論と根性精神論


  園主は、「根性が足りないから、だめなんだ」というスポコン的な「精神論」があまり好きではない。また、そういう「精神論」を説く人には距離を置いてしまう。例えば、スポーツの指導者がそのような発言をする場面があるならば、それは、その指導者が選手に対して、適切な動機づけ(モチベーション、インセンティブ)を与えていないせいなのではないかな?という気がしてしまい、その発言には、同意することができない。

 確かに、私自身も、あまりにもだらだらと物事を行う人に対して「やる気を出せ!」などと「精神論」でハッパをかけることはある。しかし、その場合には、ああ、この人は「この物事」に対して「やる気が出せないほど興味がないのだな」とか、「本人の能力と、この物事をやりこなす能力とのバランスが取れていなせいなのだな」とか、「本人の元々の心の持ち様」に原因があるのではなく、「本人」と「物事との関係」にミスマッチがあるのだろう、と解釈することにしている。
 だから、会社等で上司が部下にそのような叱責をする場合には、「適切な仕事環境」を提供できていない、会社や上司に問題もあることもあると、思われる(元々雇用のミスマッチだったという場合も十分にあるが・・)。

 なぜなら、誰だって、責任がある重要な仕事を任されれば、ハツラツと仕事をするのではないのかな。加えて、報酬がよければ、目もキラキラしてしまう。つまり、「力を発揮できる仕事だから(モチベーション)」>「やる気が出る」、「正当な評価があるから(インセンティブ)」>「やる気が出る」という事。「根性先行の精神論」ではなくて「動機づけ先行の精神論」である。

しかし、この「動機づけ先行の精神論」には、思わぬ落とし穴があることを知った。

 実は、今年の11月の初め、園主は林檎に対して少なからず「やる気」を喪失するという体験をした。「やる気」喪失の理由は、私が出荷したある市場の林檎相場が昨年に比べて1/3程度にまで下落したからだ。「一年間、土日も休まず働いた結果が、その価格かよ!」と思った途端(インセンティブの喪失)に、突然発熱して体調まで崩したのだった(笑)。つまり、「動機づけ先行の精神論」では「動議づけ」が無くなった途端にぬけがらになってしまうのだ(幸いな事に、その急激な低価格は出荷の集中による一時的なもので、その後、なんとか盛り返した。それに伴い、園主にも「動議付け」が復活、「やる気」も復活、「体調」も復活。自分ながらゲンキンなものだとしか言いようがない)。

 この不況の中では、「動機づけ」はデフレやリストラなどの外的な要因で突然喪失する危険性がある。納得いく「動機づけ」がないまま、仕事をする機会が今後増える可能性もある。そうなると、「動機づけ先行の精神論」の綺麗事だけでは生きて行けない!。もっと精神的にタフにならなければ!!。つまり、これからは「根性」で生きていくしか、ないのではないのか???。
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