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Inside Farming Vol.4 (Japanese)

時間を柔軟にマネジメントできる農業の楽しさ

農業に従事する者と他の産業に従事している者と比べて圧倒的に有利なのは、時間を柔軟に自由に使える点だ。多くのビジネスの場合、仕事の相手の都合に合わせて時には分単位のスケジュールを決定するという必要に迫られている。しかし農業の場合、もちろん忙しい季節には一秒を惜しんで仕事もするが、基本的には一年サイクルの仕事のためか多くのまとまった時間を生み出すことができる。そしてこの事は農業の大きな魅力の一つである。

河合果樹園の場合、仕事の調整をうまくすれば1月から4月の間に30日、7月から8月にかけて30日くらいの連続した休暇を取ることができる。ただし「仕事の調整をすれば」と「連続した休暇」というのがミソである。いくら自由な農業の忙しくない季節だからと言って、子供の夏休みのように向こうからやってくる休みを漫然と過ごせるような社会人はいない。けれども意を決すれば大きな休みが待っている。大人の休暇は自分で創って、自分なりに有意義に過ごすものだ。

とはいうものの、そんな私の連休は結構だらだらしている。体力的に疲れているときはなかなか本が読めないので、冬と夏にまとめて読書するというのが過ごし方のパターンだろうか。それでも今年の1月頃にはこのウェブの英語ページを一週間くらいシコシコと書いていたし、何年か前はビジュアル・ベーシックにはまって農業日誌ソフト(AG−PIM)を創ったりもした。学生時代から一度はシェイカーを振る仕事(バーテンダー)をしてみたいと思っていたが、やはりその時期にバイトで真似事もしてみた。

連休を連休らしく使ったのは、もう5年ほど前になろうか。夏にほぼ1ヶ月アメリカに滞在した。友人と二人で、西海岸の全く面識の無い林檎農家に飛び込んで農園を見学させてもらったり、ニューヨークの公園でりんごを販売している農家の話を聞いたりしてきた。さらにその翌年の夏には中国に船で12日間の旅行をした。これは長野県が主催する「信州青年連帯の船海洋セミナー」という研修船に参加したもので、充実の極みのような旅行だった(これらの旅行の体験はいずれここに書きたいと考えている)。

こうしてみると、農業を中心としたライフスタイルはなかなか充実しているでしょう。

実は、仕事にけじめをつけて長期連休を創って楽しむというスタイルは、農業に就いてから知り合った先輩で、やはり農業を営む野村さんの影響を受けている。たまたま地域のボランティア活動で知り合った野村さんは大の旅行好きで、自然大好きの心やさしい人だった。知り合って間もなかったころ彼はオーストラリア1ヶ月放浪旅行の話を熱っぽく話してくれた。レンタカーを飛ばした砂漠地帯や英語の発音に訛りがあること、エアーズロックからの風景の壮大さ。その体験談に私はいてもたってもいられず、一番興味のあったアメリカを見てやろうなどと意気込んだものだった。私がアメリカから帰ると、今度は中国の話を熱っぽく始める。それが前述の信州青年の船で、とにかく来年は河合が行け!ということになって参加した。

私だけではない。野村さんの旅行体験談を聞いてオーストラリア1ヶ月放浪旅行にチャレンジした御近所の農業の後輩もいる。野村さんは農業を中心としたライフスタイルを本当に謳歌している人の一人だから、僕らはなぜだか影響されてしまうのだ。そういえば昨年はドイツ、フランス、スイスとファーム・ステイ(農村滞在)をしてきたそうだ。ヨーロッパ人たちの環境問題への意識の高さと、ルーブル美術館のモナリザの話をまたしても熱っぽく語るのを聞かしていただいた。

ああ野村さんもう私たち後輩に旅行体験談をするのは止めてください。
行きたくなってしまいますから。



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写真、本文とも Copyright(C) 河合果樹園