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Inside Farming Vol.3 (Japanese)

ステロタイプの農業者像はもういらない。

「農」という言葉には、「封建的な家長制度」「家族内での前近代的な労働」のイメージが付いてまわっている。
例えば「農家の嫁不足」といわれる問題が「サラリーマンの嫁不足」という問題以上にあるとするならば、その原因の一つは「農家」に対するマイナスイメージによるものだろう。「農家に嫁いで大丈夫なのか?」という周りの心配の言葉は、「家に入る嫁」と、「農業への労働力の供給」という思い込みに捕らわれていて、結婚する当事者である本人たちのある種の脱力感を誘う。
このように、時として農家の社会的に持つイメージの悪さを感じてしまう事があるのは事実である(被害妄想なら良いのだけれど)。

現実はどうだろうか。確かに家族経営という側面は残っているものの、専業で農業経営をしている多くの農業者の発想や労働はそれほど前近代的ではない。なぜなら、多くの創意工夫を持って合理的・効率的・近代的に仕事をしていかないと採算に合わない産業だからだ。また、私を含めて農業者は他産業に従事したり、都市での生活の経験がある者も多い。これだけの情報社会で農業者だけが他の同世代と比べて封建的でいられるだろうか(土地に関しては封建的かもしれないが・・)。
さらに、農業者には時間を自由にマネージメントして有効に使うライフスタイルや、植物を育て収穫するリアルな満足感がある。どちらかと言えば対人ストレスの少ない環境や、子供と共に過ごせる時間の多さも現代人にとっては魅力の一つになろう。

情報不足による特定のイメージの定着が、このような悪いステロタイプを生み出した。「イメージなんかどうでも良い。実質本位こそが農業だ!」という意見があるかもしれないが、イメージの向上は業界全体の活性化や優秀な人材の流入をもたらし、結果として産業の堅固な基盤を創っていく。だから、イメージを創るための情報を発信してこなかった農業者や農業団体に現状に対しての多くの責任があると自覚しなければならない。多くの業界は、業界のイメージアップに多くの投資をしてきた。ただ物をや企業の宣伝をするだけでなく、同時に業界のイメージを広告してきた。かつて3Kと呼ばれた産業もそのイメージを払拭するために多くの努力をしてきたように見受けられる。はたして、農業という業界はどのような努力をしてきたのか?

メディアに登場する農業団体は、例えば米価引き下げや農産物自由化に徒党を組んで反対している。例えば農業地帯は地元へ利益を誘導するための農政議員の票田となっている・・・・ように見える(被害妄想なら良いのだけれど)。本意はどうであれそう見えるだけで、農業以外の人たちのシンパシーを得ることが出来なくなってしまう。
一方周りを見てみれば、企業・労組一丸の選挙応援だって珍しくない。企業団体献金もある。業界団体や経済団体の代表者はロビィ活動をしている。低金利や円安だって誘導しているのではないかと思うような(そうかどうかは知らないけれど)業界団体もある。
つまり業界の利益や権利を主張し、既存のテリトリを守ろうとすることはどの業界もやっていることだ(それが、消費者のためになるのかどうかはここでは議論の外)。しかし農業が、同様の目的や意志をアピールするための戦略・方法・効果・結果は時代に即したものだったのか・・・。

相変らず単純なストーリーで何度となく繰り返される時代劇。腐敗した代官、金に物を言わせる商人、ただ働く事しかない弱い農民というステロタイプの刷り込みはもうやめて。ステロタイプの農業者像はもういらない。



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