硯はそれ独自で用をたすものではなく、常に墨という相手が必要であるので、硯、墨、の何れ一方がいかに優秀でも発墨が良いとは限りません。 良い硯を用いて良い墨で磨墨すれば、最高の墨色が発揮される事は当然です。 ですから常に硯質に合わせた墨を使用される事が望まれます。
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◆ 磨墨 ◆ |
墨を磨る時は、なるべく硯面を広く使い心静かに、力を入れ過ぎない様磨ることが肝要です。 早く濃くしようとするあまりガシガシ力を入れて磨った墨液は、墨の粒子を粗大にし、墨色も悪くなります。
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◆ 洗硯 ◆ |
「三日面を沐せざるは可なり、三日硯を洗わざるは不可なり。」と云われる様に、硯は三日も洗硯せずに放置すると、硯池や墨堂に溜った墨液がやがて宿墨となり、乾いて滞墨となります。 この様な状態になりますと、磨墨を妨げ発墨も悪くなりますので、硯をしようしたのちは必ず洗硯する様心掛けたいものです。 洗う場合は硯面を傷つけぬ様、柔らかな布で丁寧に水洗いします。 熱湯や、タワシ等で洗うと硯面を損傷することがありますので、絶対に避けて下さい。
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◆ 手入れ ◆ |
硯は永く使用しますと、墨堂に凹みが出来たり鋒鋩が弱ってきますので、細めの砥石でとぎ鋒鋩を平均に林立させ、墨堂の凸凹を修正し、常の完全な状態を保つ様、細心の注意と手入れが必要です。
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◆ 保存 ◆ |
いかなる名硯といえども、そのまま永い年月放置しておきますと、大気中の塵や細菌が付着し、それがもととなり斑点やシミの原因ともなり、さらには風化作用をおこして硯本来の姿を消滅させてしまいます。 湿気の多い所はカビや細菌が生じやすいし、直射日光の当たる所は硯質を硬化させ、色調や光沢を失わせることにもなります。 保存については以上の点によく留意して、まず良く水洗いしたのち柔らかな布でよく拭きとり、乾いた柔らかな布に包み、できれば木製の箱に入れ、湿気のない乾燥した場所に保存して置くことが肝要です。
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