ワイドFM用プリアンプ  (2016/01/05)


 12月7日からAMラジオのFM補完中継が始まりました。首都圏のAMラジオ波が入りにくいエリアが対象となってますが、送信アンテナがスカイツリーの550m程度の高さに設置されているようなので東京から100km程の距離にある水戸市周辺でもそこそこに聞こえるのでは?と思い、90MHz以上を受信可能なDSPラジオ基板をaitendoからワンコインで購入し試してみました。アンテナは地上高8mに揚げてある第一電波工業のD130を使用しています。聞いてみると東京FMやBay-FMなどに比べてかなり強く入感しています。ただ、ローカルFM局のような安定感はなくややノイジーでした。そこでワイドFM用のプリアンプを作ることにしました。

 

 aitendoのFMラジオ基板(ワンコインでお釣りがくる)

 安物のDSPラジオはフロントエンドが貧弱なため強力なローカルFM/AM波で混変調を受けやすそうなので、ゲインを稼ぐと同時にLC同調回路によるフィルタを入れることにしました。下図のプリアンプ回路はたまたま手持ちの部品で組んだだけのものですが単純な回路なので最適化するとしてもさほど大きな変更は必要ないでしょう。

 FET(2SK241)2段のプリアンプでL1とC1、およびL4とC2で目的周波数に同調をとっています。L1、L4は何十年も前のTV用IFTらしきもので巻線をそのまま使いました。コア位置の調整でインダクタンスが0.15uH〜0.28uHくらい変化します。L2、L3、L5はRFCで、円筒形のソリッド抵抗(4.7k、1/2W)に0.2φウレタン線を20回ほど巻き付けたものです。両面銅貼りFR4基板の片面をカッターナイフと彫刻刀でパタンカットしました。

 プリアンプのゲイン測定結果を下図に示します。90MHzに同調をとっています。簡易スペアナGigaStのTG出力はアッテネータを通して-45dBほど落としてプリアンプに入れています。同調点近傍で約35dBのゲインがあることがわかります。

 LTSPICEでの計算結果でも似たような特性が得られています。比較しやすいようにシミュレーションの入力レベルを実測条件に合わせています。

         

 

 GigaStにアンテナ(D130)をつないでFM放送帯の電波をみてみました。プリアンプを付けることでTBS、文化放送、ニッポン放送の3波をプリアンプ無しのローカルFM波なみの強度で受信できていることがわかります。

 

 壁掛けラジオ(額縁ラジオ)が出来上がりました。一辺をアルミLアングルにして端子類を取り付けました。左から順にアンテナ端子(BNC)、オーディオ出力(ステレオミニジャック)、電源端子(DCジャック)です。オーディオ出力はPC用スピーカー(アンプ内臓)につないでいます。また電源(5V)はダイソーのACアダプター(USB電源)を使っています。埃よけのため裏面にプラスチック板をはりました。表面はビニールシートを画鋲止めしただけですのでラジオの選局/音量ボタンをそのまま押すことができます。

 

 我が家の造りが軽量鉄骨プレハブなのでAMラジオが入りにくい環境でした。そのためこれまでは主にRadikoのお世話になっていたのですがラジオのためにPC(タブレット)を使うのはもったいない気がしていました。ワイドFMに切り替えることで本来の”ラジオ”環境を取り戻すことができました。もっとも家の外ではAM波がちゃんと受かるので、ワイドFMのメリットといえば音質がいいことくらいですが。

 スカイツリー550m高からの可視マップをカシミール3Dで描いてみた。ひたちなか市(海抜32m)は地平線のかなたに沈み込んでいるものの筑波山系の影からは外れているようです。地形上の沈み込み量は約660mですから、スカイツリー550m高の位置をひたちなか市から直視するには地上高110m以上が必要になります。

(ピンク色のエリアが可視領域)

 一方、VHF、UHFの電波は大気の密度差のために地表の曲面に沿うように屈折します。その結果、可視エリアよりも遠くまで電波が届きます。電波伝搬ハンドブック(CQ出版)によると地球半径を4/3倍したときの見通し範囲が電波の到達エリアということなので、おおざっぱに100km程度までは直接波が届く範囲ということになります。ここ、ひたちなか市はちょうどその境目あたりに位置しています。”Radio Mobile”で計算してみるとPath_Loss=135dBということでスカイツリーで7kW送信の電波はひたちなか市ではゲイン0dBのアンテナで-60dBm〜-70dBmで受信できることになります。実際の受信状況から見ると樹木・建物等の障害物があって現実的にはさらに20dB程度減衰していると考えるのが妥当なようです。

 

 戻る