LTspiceによるチャージアンプのシミュレーション  (2017/03/01)


 フクイチ原発事故から6年が過ぎようとしている。5mm角CsIシンチレータとフォトダイオード(S6775)を組み合わせたγ線プローブを用いて、取っておいた庭の汚染土を再測定してみた。Cs-134の半減期が約2年なので事故当時に比べると約1/8に減り、一方、Cs-137のほうは半減期30年なので事故当時の87%が残っていることになる。約9時間測定した結果を以下に示す。CsI(Tl)シンチレータ面白実験 ---高分解能測定--- (2012/11/26)での測定結果と比べれば一目瞭然で、Cs-134のピーク強度が大幅に低下している。

 400keV-900keVの領域をリニアスケール表示したものが下図である。Cs-137光電ピークのコンプトンエッジがよりくっきりと浮かび上がってきた。あと4年も経てばCs-134のピークはほとんど消えてCs-137の標準試料に近いスペクトルに変わっていくだろう。

 

LTspiceによる検出回路の解析

 PD用チャージアンプ---簡易版---   (2012/11/23) で紹介した回路の回路ノイズを減らすべくマイナーチェンジをしてみた。当該回路の周波数特性(フィルター特性)をいじってみたのだがノイズ特性(30-40keVにみられるノイズカウントの立ち上がり)に有意差は見られず、期待外れの結果となった。まず元の回路とそのフィルター特性を下図に示す。 

 

 マイナーチェンジではフィルターを狭帯域化するため、C1 を0.022uFに、C2 を100pFに変更した。この結果、周波数特性は下図のように変化した。

 

 アンプのS/N比が少しでも改善されればと期待したが、実測してみるとほとんど違いがないことがわかった。

 これだけだとつまらないのでフォトダイオード(S6775)を等価回路に置き換えて出力パルス波形をシミュレートしてみた。カタログ値を参考に、8Vの逆バイアスを印加したときのリーク電流から算出した並列抵抗(25MΩ)と、端子間容量(50pF)を与えた。また光電流源の内部抵抗として1kΩを入れてみた。(後の検討により、これらの値が多少変わっても出力波形はほとんど変わらないことを確認している)

 CsI(Tl)シンチレータの発光強度とフォトダイオード(PD)の受光感度をもとに、Cs-137の662keV-γ線・1個に対するフォトダイオード電流をモデル化した。秋月のカタログによればサンゴバンCsIシンチレータのフォトン・イールドは54個/keVなので、662keVの光電吸収では54×662=35748個のフォトンが発生する。これがすべてPDに入射するものとして、PDの受光効率が波長550nmでは約75%であるから、発生する電子・ホールペアの電荷±qは、q=35748×0.75×1.6×10-19=〜4.29×10-15 [クーロン]となる。LTspiceで計算しやすいようにPDの出力電流波形をなだらかな台形でモデル化した。台形の面積(電流×時間)がqになればよいので、パルス電流のピーク値を逆算すると4.29×10-15/(2×10-6)=〜2.1×10-9 [アンペア]となる。

 LTspiceのシミュレーション結果を下図に示す。I(I1)が上記の入力電流波形、V(out)が出力波形である。

 そして、実回路での出力を以下に示す。パルス波高計測ソフト:ベクモニでスペクトル測定しながらアンプ出力をオシロスコープでモニタした。662keVのγ線が数秒に1個の頻度でカウントされるので、これに合わせてトリガをかけオシロ波形を記録した。

 パルス幅やアンダーシュートの度合いはシミュレーション結果とよく合っているが、パルス波高値はシミュレーションが210mVなのに対し実測値は160mVと低い。これはPDに入射する光量が全発光量の76%であることに相当する。シミュレーションの精度がいかほどのものか定かではないが、実際、かなり高い確率で光を拾っていると考えていいのだろう。

 

 

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