GMカウンタによる放射線計測


 2011年3月15日 04::20、自作のGMカウンタが通常値の数倍高い値を検知し始めた。その後 06:10ころには通常値の数10倍まで上昇を見せた。確認のため茨城県がweb公開している環境放射線モニタを見ると当地ひたちなか市と近隣のモニタは軒並み、通常値のざっと100倍に跳ね上がっていた。しかし、この高い放射線量はすぐに低下し始めたため避難を思い止まり、状況を見守ることにした。福島第一原発の水素爆発とそれによる放射性物質の大気中放出が報じられたのは遅れること数時間、その日の昼前後のNHK-TVニュースが最初であったと記憶している。

 

自作GMカウンタ

 今から20年ほど前になると思うが、「ポケットガイガーカウンタキット」(秋月電子)をつくった。付属のGM管[D3372]では感度不足と思い、より大型の[D4345-01]を追加購入し取り替えた。これに、すでに作製済みの「6桁周波数カウンタ」(秋月電子)を接続、ゲートタイム100秒間の計数値を表示できるようにした。作製当初は、カウンタ出力をパソコンのRS232C端子から読み込んで時系列データを記録できるようにしていたが、すぐに飽きてしまい、スタンドアローンのリアルタイムモニタに変更した。以来、現在まで故障もなく連続稼働している。

 こんなものが役に立つ日がこないことを願っていたのだが、、、

 『フクシマ』以降、webではGMカウンタに関する話題があふれかえっている。原発事故直後、テレビでコメントしていた多くの御用学者達は今、なにしてるのだろうか。安い放射線測定器(GMカウンタ)の数値は信用しない方がいい、などとあたかも”使はないほうがよい”かのような発言をなさる御仁もいらっしゃった。そんなことはないのです。正確な数値でなくとも、そこに長く滞在できるか/できないのかといったくらいのことはGMカウンタで十分わかるのです。チェルノブイリ事故では政府が被災者(被曝者)全員にGMカウンタを配布したと聞いている。我が国では、すでに5ヶ月を過ぎてもそんな話は聞こえてこない。

 話を本題に戻しましょう。GMカウンタをパソコンとつなぐことにより、測定データの記録や測定時間の延長(精度向上)が可能となる。しかし、今さらRS232Cでもなかろうとwebをあたっていると、やはり有りましたよ、便利な方法が。GMカウンタのパルス出力をパソコンのマイク端子にオーディオ信号として入力することでパルスをカウントするソフトです。

”じじい”さんのホームページ http://59aku.fam.cx/gaiger/index.htm#4) 

 

 カウンタのプチプチ音をパソコンのマイクで拾ってもいいし、カウンタから端子を引き出して直接マイク端子につないでもOKだ。ちなみに私は後者の方法をとっている。信号レベルが大きく異なるのでアッテネータを挿入している。さらに念を入れてアイソレーション・トランスも入れているが、カウンタが電池駆動の場合はここまでやる必要はなかろう。

 類似のソフトはほかにもあった。野田洋一氏のフリーソフト”Circadian Rhythm Recorder”である。ただし、こちらは計測時間が1時間単位、カウント率がcpmでなくcphで記録される。長期に渡る測定の記録に向いている。(http://www.h6.dion.ne.jp/~dog_noda/ch3/soft.html

 

 

自宅での測定  --- 我が家にもホットスポットがあった ---

 原発事故からはや5ヶ月、各地のモニタリングポストの値も安定してきた。半減期の短いヨウ素が消えてセシウムがメインの放射線源になってきたようだ。県が設置したモニタによれば、この辺(ひたちなか市)の空間線量率は0.1〜0.16 μGy/h 程度で、事故前の2〜3倍のところで落ちついている。

 自作カウンタとノートパソコンを抱え、自宅敷地内の数カ所で放射線をはかってみた。

上図に赤丸で示した6カ所でそれぞれ5分間の測定をおこなった。単純にカウント数を比較すれば線量の大小は判別できるが、GM管[D4345-01]の特性を記載したホームページがあったので、その値をもとにカウント数を線量率に換算してみた。(D4345-01のカタログを紛失してしまった。もし、お持ちの方がいらしたらコピーを頂けると有り難く存じます。)結果を下表に示す。

* [D4345-01の特性値]  感度:18cps/μGy/h、バックグラウンド(BG値)80 cpm

 駐車場屋根の雨水が集まる場所に明らかにカウント数の高いホットスポットが見つかった。他の場所より数倍高い。一方、自宅屋根の雨どい排水口付近のカウント数は特に高くはない。これは排水口が直に下水配管に接続されており、雨水がたまらない構造になっているからだろう。 そのほか、室外に比べて室内は線量が低いことやカウンタを地表に近づけると線量が増える傾向が見られる。

 なお、GM管の特性値をつかってカウント率をそのまま線量率(μGy/h:マイクロ・グレイ/毎時)に換算した値をみると、公表されている線量率よりも全般に大きな値を示している。使用したGM管のバックグラウンドが80 cpmということなのでこれを線量率に変換すると約 0.07 μGy/h となり、この分を補正すると表の右端の列に示した値が得られる。公開されている近辺の線量率の範囲内にあるので妥当なところか。まあ、よく知られているように低線量の測定ではGMカウンタの精度は低いので、あまり細かな議論をしても意味がない。バックグラウンドを無視できるくらいの高線量を確認できれば良いのである。

 

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