アンテナアナライザー(AA-30)で水晶振動子のQを測ってみました。
古い古いリグから部品とりしたものですが、HC49Uタイプ2個とHC6Uタイプ1個です。いずれも3倍オーバートーン発振です。(a)は20.020 MHzで裏側にFT101 YAESUの刻印があります。(b)は14.000 MHzで何に使われていたものか不明。(c)は50.2 MHzでAA-30の測定周波数範囲外ですので基本波(〜16.7MHz)を測ってみることにしました。
AA-30の端子に水晶振動子を直接つないで測定してもレンジオーバーになってしまいますので、端子と並列にキャパシタ(Cex)をつないでインピーダンス変換します。水晶振動子の等価直列容量(C0)とCexが直列接続された形になりますので、インピーダンスはほぼCex:C0にステップダウンされます。実際の測定に適したCexは100pF〜1000pFくらいのようです。
複素インピーダンスを測定しRs共振ピークの中心周波数(fC)と半値幅(FWHM)を読み取れば、Q=fC/FWHMによりQが求まります。
サンプル(a)はfC=20.022020 MHz、FWHM = 90 Hzで、Q = 2.2×105 でした。
サンプル(b)はfC=13.99476 MHz、FWHM=190 Hzで、Q= 7.4×104 でした。
サンプル(c)はfC=16.70802 MHz、FWHM=320 Hzで、Q=5.2×104 となりました。
セラミック発振子についても同じ方法で測定を試みたのですが、共振ピークが非対称になまってしまい測定できませんでした。この原因はおそらくAA-30の信号出力が大きすぎるためだろうと思ってます。
サンプル(a)について等価直列抵抗(R0)を求めてみます。そのためには等価直列インダクタンス(L0)もしくは等価直列容量(C0)を知る必要があります。外付けキャパシタの容量を変えると共振周波数がわずかに変化します。この変化量からC0を推定してみます。
上の2つの図は外付けキャパシタが220 pFと330 pFのときの測定結果です。Cexを大きくするにつれ共振周波数が少しづつ低下しています。Cexを大きくするとともにRsのピーク値も低下しますがRsピークのFWHMはほぼ90 Hzと一定です。(a) Cex=150pFの図もあわせてごらんください。
C0の計算は以下の等価回路にもとづいておこないました。
ここでCexは、外付けキャパシタの容量に水晶振動子の端子間容量とアンテナアナライザーの端子の浮遊容量を足し合わせたものとして扱います。Cメーターで測ってみると水晶振動子の端子間容量は6 pFでした。また、接続治具を装着したアンテナアナライザーの端子間容量は12 pFでしたので、エイヤーで+20 pF加算することにしました。
計算式は以下の通りです。
外付けキャパシタの容量が150 pF と330 pF のときの周波数差が55 Hzであったので,水晶振動子と測定器の端子間容量を加え、Cex1=150+20 pF、Cex2=330+20 pF、f1-f2 = 55、f0 = 20.02×106 として計算するとC0=0.0018 pFとなりました。また、R0 = 1/(2πf0・C0・Q)の関係からR0 = 20Ω、L0 = 1/{(2πf0)2・C0}の関係からL0=35 mHと求まりました。
求めたパラメータを使って上図の等価回路の計算をおこない、測定データを検証してみます。
L0=35 mH、C0=0.0018 pF、R0=20Ω、f0=20.021905 MHzは各計算に共通の数値です。
i) Cex = 150+20 pFで計算、
ii) Cex = 220+20 pFで計算、
iii) Cex = 330+20 pFで計算、
Rs(=Re(Z))の実測値はほぼ計算値と合っているように見えますが、Xs(=Im(Z))のほうは実測値のベースラインが計算値よりも5~10Ωくらい小さいほうにずれています。AA-30の測定精度の問題か、あるいは何か測定のやり方がまずかったのでしょうか。ともあれ、Q測定自体はちゃんとできているようなのでまずは良しとしますか。