鳥は鳴いているか --- 1年間、屋外に放置した”早起き鳥”   (2014/03/31)


 約1年前、癒し系おもちゃ”早起き鳥”を作って庭先の木の枝に吊り下げた。直射日光や雨風にさらされてどんなダメージを受けたか確認してみた。

 小鳥1号、小鳥2号、ヒヨドリ1号と命名した3体についてはすでに既報(2013/02/25)で紹介したが、さらにヒヨドリ2号を追加し、計4体を耐候試験に供している。丸1年経過した現在、鳴き声を発し続けているのは小鳥1号、ヒヨドリ1号、ヒヨドリ2号の3体で、残念ながら小鳥2号は半年経過後に鳴かなくなった。

 

 「小鳥1号」

 木製プレートを基台としたがプレート自体には防水処理をしなかったのでみすぼらしくなってしまった。

 

 電子部品のモールドに使ったシリコーン・コーキング材はなかなかの優れもので変色やヒビ割れは認められない。また木製基台にもしっかり張り付いている。 一方、ソーラー・セルの貼り付けには透明度の高いポリマー接着剤(主成分はシリル化ウレタン樹脂)を使った。万一、接着剤がセル前面にまわり込んでしまってもセル出力が低下しないようにとの些細な配慮によるものであった。室内での使用には問題ないのだが、雨風にさらされる屋外環境ではガラスとの接合部に剥離が生じていた。ガラスとの相性が良くなかったようだ。

 

 「小鳥2号」

 ソーラー・セルを2個直列(6V)にしたタイプ。半年で音が出なくなったがそのまま1年間、屋外放置した。木部の防水処理をしなかったため、外観は「小鳥1号」と同じく色あせている。

 

 ソーラー・セルの貼り付けにポリマー接着剤を使っおり、「小鳥1号と同様、ガラスとの接着面の一部に剥離がみられた。

 どこが壊れたのか調べるため、シリコーン・コーキング材でモールドされた電子回路部をカッターナイフを使って基台から削ぎ落とした。圧電スピーカのほうはポリエチレン袋をかぶせただけ(下方開放)の安直な造りだったが外観は全く新品同様の状態だった。回路の電源ラインを取り出しこれに外部電源(4.5V)をつないでみたところ、”チュン、チュン、チュン”と元気よく鳴り出した。ということは、故障の原因がソーラー・セル側にあったということになる。

 セルの開放電圧をテスターで測定すると最大0.8V程度で値がふらふらする。オープンになりかけているようだ。基台から外して外観観察してみると、受光面にシミのようなものが見えた。基台から外す際にリード線が取れてしまったが、電極端子周辺には青緑色の腐食痕が認められた。水分の侵入によるものと思われる。透明ポリマー接着剤とガラスの密着性が良くなかったことから、雨水がしみ込んだようだ。ソーラー・セルの防水は接着剤の種類に気を付けないといけない。

 

 こうしてみると、同じ工法で作製した「小鳥1号」のほうも遠からず音が出なくなるのかもしれない。ソーラー・セルの裏面(受光面の反対側)に薄い半導体薄膜がコーティングされているので、ちょっとした引っ掻き傷などがあってもそこから腐食が始まる可能性は十分にある。裏面をもっと慎重に防水する必要がありそうだ。

 

 「ヒヨドリ1号」

  パーツに直接、白色の防錆塗料をスプレーしたものであるが、正常に動作し続けている。外観も目立った変化はない。

 

 ソーラー・セルは2液混合薬型のエポキシ接着剤で固定している。接着剤剥離の兆候は見られない。

 耐候性の点ではこの構成が良好のようである。

 

 「ヒヨドリ2号」

 ソーラー・セルを2個にしたタイプ。防錆塗料をスプレーしていない鳥の頭部分はエポキシ樹脂がむき出しになっており、これがやや変色していた。ひび割れ等はみられないのでまだしばらくは持ちそうである。当初、電解コンデンサのリード線に防錆塗料が塗られていない部分があり、2か月くらい経って錆びてきたたので塗料を上塗りしている。その後とくに不具合は出ていない。

 

 

 組み上げた電子部品を直に防水コーティングし、耐候試験をしてみた。高価な防水ケースを使わない実装法の可能性を試すことが目的であるが、1年経ってみると色々不具合が見えてくる。防水材の種類は多種多様でこれがベストといった答えはなかなか得られないように思う。ただ、耐用年数とコストを天秤にかけてみれば、ここで試したような安直な防水処理でも適用可能な対象がありそうに感じる。2,3年の使用なら、美観の問題はあるが、全体にポリ袋をかぶせただけでいいのかもしれない。また、EVA樹脂を使ったホットメルト接着などは今後試してみたいものの一つである。

 

 使用したモールド材、接着剤など

○シリコーン・コーキング材

建築用のシーリング剤で硬化後もゴムのような柔軟性がある。330cc入りで300円程度と安価。電気的絶縁性も良好。柔軟性があるためクラックはまず発生しない。アンテナ工事には重宝している。

 

 

○エポキシ接着剤

定番の2液混合型。80gセットで1000円前後。強力な接着力が得られる。化学反応後固くなるのでストレスがかかる場所ではひび割れに注意。長期の太陽光照射で変性(変色)する。

 

 

○ポリマー接着剤(シリル化ウレタン樹脂)

多用途が売り物の接着剤。120cc入りが600〜700円程度。空気中の水分を吸って固まるので、金属やガラスのような湿気を通さない物同士の接着では内部が硬化しない場合があるとのこと。硬化後もやや柔軟性がある。透明度が高いので光をさえぎらない。

 

 

 戻る