波高分析ソフト(PRA.EXE)で遊んでみる


 PRA.EXE(Pulse Recorder and Analyser)はシドニー大学のMarek Dolleiser氏が公開しているフリーウェアで、パソコンのサウンドデバイスを使ってパルス波高分析ができるソフトウェアです。

http://sydney.edu.au/science/physics/~marek/pra/index.html

 つまり、このアプリケーションをパソコンにインストールするだけで、パソコンが波高分析器(MCA: Multi Channel Analyser)に変身するわけです。従来、MCAは高価なハードウェアでした。これをパソコンとフリーウェアのアプリケーションで実現できる訳ですから、SDR(Software Designed Radio)と同じように画期的なことではないかと感じています。パソコンのサウンド入力のサンプリング周波数(48kHz)が低いため観測できるパルス幅は数10μs以上という制約はあるものの、高価なMCAを購入する必要がないという大きなメリットが生まれるのです。このアプリケーションを立ち上げるとメインウィンドウが開き、測定時間と検出したパルス数が表示されるようになってます。入力端子をLINE-INにするかMICにするかの選択はパソコンの「サウンド設定」でおこないます。メインウィンドウの"View"メニューから、目的に応じてパルス波高分布、カウント率、カウント率分布、パルス間隔分布、パルス幅分布などを表示できます。

(大きい画像はこちら

 

 というわけで、早速その機能を確かめてみました。使用パソコンは、パソコン工房のBTOパソコンでCPU:AMD Sempron 3000+、オーディオデバイスはマザーボード組込の”Realtek AC'97”です。

 パソコンのLINE-IN端子(RCAジャック)にパルス信号を入れて波高分布を測定しました。パルス形状は矩形波でパルス電圧は5、10、25、50,100mVの5条件、パルス幅は100μsec(共通)、20cpsの頻度で各電圧条件ごとに約2000発のパルスを送ったときの波高分布の下図ようになりました。

 入力電圧とカウント数のピーク位置(パルス波高値)の関係をプロットしたものが次の図です。

 ほぼ直線関係にあることを確認できました。100mVの点が少しずれていますが入力電圧の誤差なのかPCのサウンドカードの特性なのかは不明です。

 次に入力パルスのパルス幅を変えてパルス波高分布をみてみました。サウンドカードのクロックが48kHzなのでサンプリング間隔は約20μsになります。矩形波パルスの電圧を12.5mV(一定)とし、パルス幅を100μsから狭めていくと次のような結果が得られました。

 パルス幅が40μs以上ではピーク位置はほぼ”30”近辺にありますが、パルス幅がさらに小さくなると計測される波高値がどんどん小さくなっていくことがわかります。したがって正確な計測をするためには、入力パルスのパルス幅がサンプリング間隔の2倍程度必要だということのようです。ただ、パルス幅が40μs以下であっても波高値の分解能は極端には悪化しないようなので、パルス幅が一定であれば波高分布を読取ることは可能かと思われます。

<補足>サンプリング周波数が96kのオーディオインターフェース:UA-1G(Roland)があったのでこれをつないで音源を変更しましたが、RPA.EXEの方が対応していないようで、パルス幅が40μs以下の場合、同様の特性でした。SDRのI/Q信号処理では48k→96k(ADC:16bit→24bit)の変更で、バンド幅が2倍に拡大、ノイズレベルの低下など、効果絶大だったのですが、RPA.EXEのサンプリング周波数は48kに固定されているようでちょっと残念な気持ちです。

 では、これを何に使うのでしょうか。実は今、PINフォトダイオードを使った放射線検出器の作製を進めておりまして、環境γ線のエネルギースペクトル測定を画策している最中です。結果については後日、お知らせしたいと思います。

 

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