CsIシンチレータを付けてみる (2011/12/08)


 「秋月電子通商((株))」からCsI結晶シンチレータが発売された。これも放射線への関心の高さへの表れか。

  早速、1cm角のCsIを購入し、フォトダイオードに取り付けてみた。検出回路は「PINフォトダイオードによるγ線エネルギースペクトル測定(2) (2011/11/01)」に掲載したものを用いている。フォトダイオードは受光エリアが1cm×1cmのPS100-7SMと5.5mm×4.8mmのS6775それぞれについて試してみたが、γ線のカウント率にほとんど差がないことがわかった。CsIの発光数は変わりないので当たり前ではあるが。むしろ、値段の安いS6775を使った方がアンプのノイズレベルが低くなる傾向が見られた。接合容量が小さいことが効いているのか、それとも寸法が小さいことで実装上ノイズ抑制につながっているのかはっきりしないが、ともかくS6775の方が良さそうである。アンプの出力をパソコンのサウンド入力に取り込み、パルス解析ソフト”PRA”でカウント率と波高スペクトルを観測した。

 購入したCsI結晶は接合面(鏡面)を除いて粗化処理がされ白いシールテープが巻かれていたのでそのまま使うことにした。

 接合面に薄くシリコングリースを塗り、フォトダイオードの受光面と貼り合わせた。それをテフロンテープでぐるぐる巻きに。

 さらに遮光のため黒のビニールテープを巻き付けて完成。あまり見てくれは良くないが、アンプに繋いで波形を見るとポツポツとパルスが見えるので遮光はできている様子。

 

 線源は我が家のホットスポットから採取した土である。この辺りの空間線量率は約0.1μGy(=0.1μSv)。原発事故前は0.05μGy前後であったから、現在観測されている線量の半分は原発から飛んできたもの由来と考えられる。ホットスポットではGMカウンタの数値が数倍に上昇する。そこから採ってきた土をガスコンロであぶって水分を飛ばしビニール袋に詰めた。それをタッパーに入れ線源として使用している。

 自作チャージアンプのノイズレベルが高いのでパルス波高の閾値を高めの200 keV相当に設定、測定結果を下図に示す。測定時間は1時間、バックグラウンドは平均 74 cpm、線源を近づけた時のカウント率は750 cpmであった。波高スペクトルには予想通り、Cs(134Csと137Csが混在)のピークが現れた。CsIシンチレータ自身のエネルギー分解能はもっと良いのだが、アンプノイズが大きくピークがブロードになっている。それでも600 keV付近のピークと800 keVのピークはかろうじて分離できているようだ。

 

 私のような素人にとってローノイズアンプの作製はしきいが高い。かといって既製品を買ってしまうのはおもしろくないし、値段も安くはないだろう。ということで結局、光電子増倍管(PMT)に手を伸ばすことになった。もちろん中古品だ。e-bayに出品されていたHamamatsu R1548(〜$60.)を入手した。たぶん役目を終えたPET診断装置から取り外したものだろう。中古品なので管電圧を1400V以上に上げるとノイズの増加が目立つ。最大定格の1750Vまで持ちそうにない。しかしそこまでゲインを稼ぐ必要もなく、実際は700V前後で十分な感度が得られている。電池駆動させる場合には省エネの観点から600V程度が適切かも知れない。高圧電源は秋月で700円で買った冷陰極管インバータを流用した。

PMTの受光面に1cm角CsI結晶を取り付けてγ線を測定してみた。管電圧700Vで1時間測定した。ノイズレベルが極めて低く、さしずめ”腐っても鯛”といったところか。30-40keVにある137-Csのγ線まで見えている。閾値を十分下げているので、同じホットスポットの土に対してカウント率は1700 cpmに達している(バックグラウンドは320 cpm)。カウント率を上げるにはやはり低エネルギー域の発光を拾ってやることが大切なのだ。

 

 赤ちゃん用のミルクからも放射性セシウムが出てきたとのことである。これから放射性物質との長いお付き合いが始まる。特に内部被爆に関しては注意深い対応が必要だろう。

 思うに、システマティックな思考が苦手な日本人の組織がこの先、どういう行動をとるかと考えると、おそらく、原発を継続することに精魂を傾けることになるのだろう。原発推進の専門家集団(官僚+学者+国策企業)は”終戦”を迎えるまではとにかくがむしゃらに突き進むのだろう。まことに、失敗から学ぶことをしない国なのである。そう思いませんか。

 

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