無線機とPCをUSBケーブルでつないで使っていますが、雷サージ対策の一環としてUSB絶縁をしてみることにしました。USBケーブルをフェライトコアに巻付けてRFチョーク(コモンモードフィルタ)にして使っていますがアンテナ・無線機系統とPCがDC的につながっているのは気持ちが悪い。GNDループを断ち切ることで雷サージ耐性が如何ほど向上するかは全くもって未知ではありますが、神社のお守り程度のご利益があるかもしれません。
e-bayで見つけた中華USBアイソレータは1,200円程度で最悪、部品取りしても元が取れそうなくらいでした。USBデータの絶縁にはADuM3160、絶縁型DC-DCコンバータはMORNSUNのB0505S-1W、データ転送速度切り替え用にフォトカップラーEL817が使われています。
表面実装の細かいチップを読めないので回路図を起こすのは諦めましたがアナログデバイセスの参考回路と比較しながら回路の概要を推測してみました。電源の絶縁型DCDCコンバータに関しては中華USBアイソレータでは電流容量が約2倍になっていますが入出力間容量が48pFと大幅に増えています。また中華USBアイソレータではRFチョークやダイオードによる過電圧保護回路が入っていません。高周波に対しては甘い設計のようです。データ速度切換えスイッチはことさら高速である必要はないのでフォトカップラーを使っているのは妥当な選択でしょう。
アナログデバイセスの参考回路(CN-0159, Fig.1)) | 中華USBアイソレータ | |
USBデータ絶縁デバイス | ADuM4160 (data rate: 1.2Mbps and
12Mbps)
絶縁耐圧: 5kV 入出力間容量: 2.2pF |
ADuM3160 (data rate: 1.2Mbps and 12Mbps)
絶縁耐圧: 2.5kV 入出力間容量: 2.2pF |
電源絶縁デバイス | ADuM5000 (100mAMAX)
絶縁耐圧: 2.5kV 入出力間容量: 2.2pF |
B0505S-1W (180mAMAX)
絶縁耐圧: 1kVDC 入出力間容量: 48pF |
速度切換えデバイス | ADuM1100
絶縁耐圧: 2.5kV 入出力間容量: 1pF オンタイム: 10ns |
EL817 (photo coupler)
絶縁耐圧: 5kV 入出力間容量: 1pF オンタイム: 4us |
フィルタ、保護回路など | データラインフィルタ: 有り
電源ラインフィルタ: 有り 過電圧保護(ダイオードマトリックス): 有り |
データラインフィルタ: 無し
電源ラインフィルタ: 無し 過電圧保護: 無し |
APB-3のネットワークアナライザを使って周波数特性を測ってみました。INPUT端子を50Ωに設定、OUTPUTとINPUTを短絡したときの測定データで正規化した後、OUTPUTとINPUTの間にDUTをつないで減衰量を測定します。DUTのインピーダンスをZとし、|Z|が50Ωよりも十分に大きいとすると減衰量:ζは
となります。これをdBで表すと
となります。
中華USBアイソレータの測定結果は以下のようになりました。減衰量が周波数に逆比例していることから容量性リアクタンスがメインで入出力間容量は70pF程度と求まります。DCDCコンバータ(B0505S-1W)だけで50pFあるので妥当な結果でしょう。RFフィルタが入っていないのでHF帯ではスカスカな感じですね。
USBケーブルをフェライトコア(FT240#43)に15回巻きしたコモンモードフィルタ(CMF)のアイソレーション特性と中華USBアイソレータを併用したときの特性を測定してみました。高周波数側ではCMFの効果が顕著に出ています。1.3MHz付近に減衰量の低下を示すピークが現れています(黄色線)が、これはCMFのL成分とUSBアイソレータのC成分が直列共振しているためです。
安価なUSBアイソレータで無線機とPCの絶縁を試みました。周波数特性を調べた結果、DCおよびオーディオ領域では十分な絶縁特性がみられたものの、1次側と2次側の絶縁容量(入出力間容量)が70pF程度と比較的大きく、USBアイソレータ単体ではHF帯でのアイソレーションは不十分でした。実際はコモンモードフィルタの併用によりHF帯で数kΩ台のアイソレーションを確保しています。