疎結合2ポート法によるコイルのQ測定    (2014/11/04)


1.はじめに

 前回、アンテナアナライザー(AA-30)を使ってコイルのQ測定を行いましたが、確認のため、今回は異なるやり方で同じコイルのQを測定してみます。

 

2.疎結合2ポート法

 共振コイルの-3dBバンド幅を測定し、Q=f0/Δf の関係からQを求める方法です。測定対象コイルに測定周波数に共振させるキャパシタをつないで共振回路を構成します。当然のことながら、キャパシタのQはコイルのQよりも十分大きいものとします。この共振コイルに直径5cm程の送信コイルと受信コイルをそれぞれ結合させ、伝送特性を測定します。送信コイルに振幅一定の信号源をつなぎ受信コイルにRF電圧計をつないで信号源の周波数を変えながら受信信号の電圧を読み取っていきます。コイル間の結合が強いと信号源の出力インピーダンスおよびRF電圧計の入力インピーダンスが共振器の損失抵抗に加味されて測定値は負荷Q(QL)となるわけですが、結合が弱ければQL(負荷Q=Qu(無負荷Q)の関係が成り立つので、Quを直読できることになります。

    Fig.1-a  Schematic view of coil arrangement for Q-measurement

 測定装置の構成をFig.1-aに示します。今回はRF信号源としてSGHP8657B)を使いましたが、もちろんAA-30も立派なSGとして使えます。RF電圧計にはSDRを使うことにしました。ダイオード検波のRF電圧計では検波出力の直線性を校正しなければなりませんがSDRを使えば広いダイナミックレンジでRF電圧を読み取ることができます。実際、SDRの入力端子にSGを直結してリニアリティーを確かめてみると-130 dBm-20 dBmの範囲でRF電圧をほぼ正確に検出していることを確認できます(Fig.1-b)。

    Fig.1-b  Signal strength displayed in SDR (Soft66LC4+HDSDR)

 

3.リンクコイルの結合度と負荷QQL

 リンクコイル(送信コイル、受信コイル)を測定対象コイルからどの程度離せばいいのか、確かめてみました。Fig.2の構成で信号源の出力インピーダンスもしくはRF電圧計の入力インピーダンスに見立てた50Ωのダミーロードをリンクコイルにつないで負荷QQL)を測定したところ、コイル間隔を大きくして結合度を小さくすればQL(負荷Q)=〜Qu(無負荷Q)の関係に近づくことがわかりました(Fig.3)。コイル間隔を5 cmまで広げればほぼQL=〜Quとなります。ということで、送信コイルと測定対象コイルの間隔、受信コイルと測定対象コイルの間隔をそれぞれ5cmとしました。

    Fig.2   Evaluation method of the loaded Q (QL

    Fig.3  Loaded Q (QL) vs. the distance of 50Ω-terminated linked coil

 

4.3-dBバンド幅、Q

 Fig.4は実際のコイル配置の写真です。送信コイルに-21 dBmのRF信号を印加、受信コイルに接続したSDRRFレベルを読み取ります。

    Fig.4  Coil arrangement for the band width measurement

 

 同調キャパシタ100 pF、共振周波数6.874 MHzの伝送特性をFig.5に示します。3-dB幅が21 kHzですから、Q6.874/0.021=328です。

    Fig.5  Signal strength transmitted by the resonant coil ( f0=6.874 MHz)

 共振コイルを取り除いて2つのリンクコイル(間隔13 cm)だけの伝送特性はFig.6のようになります。共振コイルを介した信号強度よりもはるかに低いレベルにあること、また帯域内のリップルは1 dB以下であることがわかります。

    Fig.6  Signal strength in absence of the resonant coil

 

 もう1点、同調キャパシタ7 pF、共振周波数25.1 MHzについても測定してみました。バンド幅は106 kHzでありQ =25.1/0.106=237でした。

    Fig.7  Signal strength transmitted by the resonant coil ( f0=25.1MHz)

 2ポート法で計測したQ値を前回のAA-30で計測したQ値と比較してみました。今回の計測は2点のみでしたが、どちらの方法でもほぼ同じQ値が得られることを確認できました。

    Fig.8  Q-values measured in this experiment compared with those by AA-30

 

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