糊について

 古来より表装では糊作りが最も難しいノーハウとされており、山本 元著『表装の栞』の中でも腐糊作りに苦心した職人の様子が伺えます。 今では伝統的なショウフ糊や一般に普及した化学糊も、専門家用に市販されていますし誰でも使いやすくなりました。 私は17年前、一雅堂の先代社長 片岡市郎氏宅を訪れ、片岡糊を作られたご苦労話とともに、片岡糊の特性や使い方を詳しくご指導いただき、又表装についても多くのアドバイスを頂戴しました。 以来、切継糊以外はすべて片岡糊を使ってきました。 ここでは長年の実績のある、この糊の使い方をお伝えします。

 @の袋が
原糊2kgで、このままでは水で薄め難いので、使う前日に原糊1に対し水(ぬるま湯がよい)1の割合で適当量をビン等に取り、ある程度撹拌して置くと直ぐ使える状態になります。 糊盆のものが2倍に薄まった濃い糊で、布地の裏打ちはこのまま使用していますが、絹本の肌裏や正絹どんすの裏打ちは、塗った糊を良くシゴキ(シゴキ刷毛があればなお良い)落とし表に糊じみが出ないよう注意してください。 額用の厚い紙を裏打ちする場合は、濃い糊1に対し水1位が良く、紙の厚さで濃度を考慮してください。

 Aは濃い糊1に対し水2,5〜3に薄めた
水糊で、紙の本紙(紙本)の肌裏打ちや總裏(上裏)は全て水糊を使います。 但し肌裏と回り糊(仮張りの時)は少し濃い目がよく、ロール紙の場合は、水糊1に対し水2〜2,5で調節して見て下さい。
 糊の濃度は紙の質や厚さ、漉き方等で微妙に違いますので、経験で学んでください。 又片岡糊は少し濃い目の糊でも仕上がりはゴワゴワせず、乾燥時に熱を与える(温風)と糊着きの良いのも特徴です。
@ A