一言


「好き」という、たった一言が言えぬ私を
どうか許してください――

私の気持ちは一つで
他に表す言葉があるわけじゃないのに
未だに応えぬ私を 悲しそうに見つめる貴方の瞳が少しツライ

もし今、あの言葉を口にしたら
あの頃と同じ骨のない人形に 私は成り下がるだろう
それがわかっているから……私は言葉を封じ込めた

過去(むかし)の別離(キズ)が訴える
どこまでもあの人を頼り 溺れていたあの頃は
あの言葉に縛られ縛り 他には何も見ていなかった
不可抗力だと、事故だとわかってはいるけれど
別れは突然すぎて お互いに知らぬまま
私は骨抜き人形の姿で 地面に転がった

骨抜き人形になり 貴方を失うのが怖い
またあの悲しみを 味わいたくない
一人で立てなくなることが、恐ろしい

やっと立ち上がったその頃に、貴方は私の側にいた
友人、悪友、相棒……時は過ぎ
いつの間にか間は縮まって、貴方は私を抱きしめる
喜びに 唇からこぼれそうな言葉を必死にくい止める
言ったが最後 私は人形になるだろう
また私は地面に転がるのか?

人形の私には、貴方しかいなくなる
どこまでも無防備に 私は貴方にすがりつく
だから今少し待ってください
私がもう少し強くなるまで、もう少し勇気がたまるまで
どうかこのワガママを叶えて

今は閉じこめて 胸の内だけで育もう
貴方への気持ち 何よりも恐ろしく大切な言葉……
「好き」と
いつか必ず伝えよう
ホネヌキになる その覚悟が出来たなら


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