コラムる

徒然なるままに、愛しのキャラクター達へ思いを馳せる。
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 12     ロメオ君へのエール<ジョジョ・ストーンオーシャンより>  
今回は徐倫の元彼、ロメオ・ジッソ君について読み解いてみたいと思います。
 
ロメオ君はお金持ちの真性へタレとして描かれています。アナスイみたいにネタで揶揄されているのではなく、真性のへタレ君なので、もはやネタとして遊ばれてもいません。
 
そんなロメオ君と徐倫のドライブから「ストーンオーシャン」は始まるわけですが、さて二人の様子を観察して見ると気が付く事が何点かあります。
 
徐倫はロメオ君に愛称で呼び合いたいと言っているのに対しロメオ君は恥ずかしい、と乗り気ではありません。
しかもニックネームが恥ずかしいという理由や徐倫の過去をやたらと気にする動機も「友達の噂が気になる」からです。
自分の判断よりも他人の評価の方を気にする器の小ささが随所に見受けられます。
 
徐倫はロメオ君のどこが良いと思って彼を恋人に選んだのでしょうか?
性格に惚れたというのは先ずなさそうです。
「腕のタトゥー」を見咎めるロメオ君の口調は今初めて気が付いたような物言いですし、二人の親密度はかなり浅く、知り合って間もないような印象も受けます。
まさか金持ちだから・・・というのが第一基準だったのでしょうか。
徐倫がお金に揺らいだとは考えたくないですし・・・、優秀な学者である父(離婚中だけど)を持っているのだから愛に飢えてもお金に飢えているわけではないと思います。
ではでしょうか。
顔は・・・ジョジョワールドの中では平均以上なのかもしれませんが(?)自分的にはその特異な髪型が気になってしまいます。
横真一文字の剃り込み・・・?(しかも数本)「ファッションだ。」というのにはあまりに奇抜な外見です。社会のレールから外れる事を良しとしないロメオ君ですからひょっとしたら、この髪型は天然・・・剃ったのではなく単純に生えてこない部分なのかもしれません。(プッチ神父のように)
 
ロメオ君と徐倫の付き合いだした経緯については不明ですが、何かの折で可愛い徐倫をロメオ君が見出し(ロメオ君は絶対見た目から入った)、声をかけてきて徐倫はまんざらでもなかった、という説を一応挙げておきます。
細かい部分の趣味趣向は食い違いが多そうな二人ですが、父親に対し強い反発を覚えていた当時の徐倫にしてみれば父親とは正反対なイメージの、物腰が柔らかいロメオ君が魅力的に映ったのかもしれません。
 
このように見てくるとロメオ君という男は全くもって徐倫にふさわしくない殿方のように思えます。
ただでさえなんだか相性が悪そうで、事件がなくても長続きしたかどうかは疑問の所です。
歴代ジョジョの恋愛話は初代ジョナサンを除いて、ほとんど深く描かれることがなくパートナーに重点が置かれる事はなかったとはいえロメオ君のキャラはあんまりです。
なにしろジョースターの一族は「一生に一人の相手しか愛さない」のです。
父への屈折した想いから相手を見分ける心の目が育っていなかったとはいえ、仮にもジョジョの名を受け継ぐ徐倫が選ぶ相手にしては徐倫、目が曇りすぎ。みたいな、こんな男がマジ一生に一人の相手だったらどうしよう。彼への傷ゆえに徐倫がもう人を愛せなくなったらどうしよう、ロメオ許すまじ。
・・・などと当時の自分は思っていたものでした。
 
荒木先生はロメオ君にどんなポジションを考えて彼というキャラクターを作ったのでしょうか。(デザインもキャラ背景もそこはかとなく適当臭がしますし)
 
しかし轢き逃げ事件を起こした上、徐倫を裏切り、彼女の心に深い傷を付けたロメオ君は意外な形で物語に再登場することになります。
 
それは徐倫が神父を追って脱獄し、追跡するための「足」を得るためにロメオ君の実家を訪れたエピソードでした。
刑務所の中でもまれ、数々の戦闘を体験し、凛々しく逞しく男らしく・・・もといしなやかに強く美しくなった徐倫に比べ、再登場のロメオ君、相変わらず適当臭を漂わせています。しかもなにやら縮んでいるというか、5頭身キャラにバージョンチェンジしているように見えます。
しかも変な足ポーズで徐倫に許しを請う情けなさ。
「会いに行こうとしたけど止められていた」という言いわけですが・・・また人のせいです。さすが真性へタレ。当然そんな言葉はもはや徐倫には届きません。
金と車のキーを受け取ると、さっさと彼の元を去ってしまいます。
 
実は密かにロメオ君の舌にキッスのシールを貼っていた徐倫達は一人になったロメオ君の動向をフューチャー。
きっとまた裏切るだろう・・・という一行の予想に反して聞こえてきたのは、徐倫をかばい警察の追跡を撹乱しようとするロメオ君の電話の様子でした。
これには徐倫も少々びっくり。読者も大変びっくり。
 
ジョジョワールドは勧善懲悪のスタイルをとる作品なので一度悪事を犯したキャラクターがその後改心する事は少なく、しかもスタンド使いではない準レギュラーですらない、適当臭の漂う一般人に至っての「描き直し」は皆無に等しかったので大変めずらしいケースだと思います。
 
徐倫というキャラクターが成長し輝きを増すにつれて、作者様が徐倫の元カレをあまりに底辺なキャラクターのままにしておくのはまずい(?)と思ったのかはわかりませんが、ロメオ君も黄金の魂を持った彼女が一度は好意を寄せた男性としてミジンコでも「それなりの素養」を持っていた事が判明します。驚きですが・・・感動です。
 
徐倫もそんな彼を見直しますがシールはやっぱり剥がされて哀れロメオ君は負傷してしまいます。
改心したのだから可哀想、とも思いますがなにしろ彼は真性へタレなので仕方がありません。警察に取調べを受けてねじ上げられたら「ゴメンよお〜徐倫−ッ」とか泣きながらすぐにゲロりそうな感じですし・・・・・・・。
 
「事件」は結果的に徐倫とロメオ双方に成長をもたらしました。
しかし同時に二人の恋人としての引力を断ち切ってしまいます。
宇宙が一巡し、「空条徐倫」という存在がこの世から消えてしまった今、ロメオ君の記憶からも徐倫は消えてしまっているかもしれません。
けれど彼女を失った時の後悔の気持ち、彼女に許されたいと思い警察に自ら進んで嘘をついた勇気、徐倫の存在が与えた「黄金の魂の芽生え」は忘れないでいて欲しいものです。
 
同じあやまちを犯さないで、素敵なロメオ君になって、新世界で「彼女」と・・・もしすれ違う事があったなら少しでも既視感を持ってくれたら、頭のどこかで徐倫を思い出してくれたら・・・と思います。
 
2003年9月24日
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