「銀のマリア」(スクアーロ&ティッツァーノ)
傷の痛みを酒で誤魔化してベッドに倒れこむと、腕が伸びてきて俺の顔に濡れた布をあてる。
 
『いつも、貴方だけが、傷ついてしまいますね。』
 
俺を気遣う声が夜の闇に透る。
 
心配するな。君がいなければ、俺は勝てなかった。
今日も、この前も、いつも。
 
軋む体をひねり、仰向けに顔を起こせば窓辺に飾られた白い花が視界に入る。
 
 
『貴方が、好きだと言っていたから。』
 
俺のために君は部屋に花を添える。
薄く銀色に光る百合の花。
静かで、うつむいた感じが、君に似ていると思ったんだ。
 
「勝つぜ、明日も。」
俺がつぶやくいつもの文句を、
君はその度微笑んで
ええ、
と答える。
 
「ずっとな。」
『はい』
 
「一緒にな。」
『はい』
 
『勝ち続けましょう。スクアーロ。
私達・・・』
 
 
 
望む言葉を、問えばいつも返してくれる。
 
 
 
優しい唇で、
世界で一番綺麗な嘘を答えてくれる。
 
                    終
2004.4.1
 
 

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