「オード・シ・エル」(アイリンとアナキス)
痛いくらい綺麗な海のそばで
 
私達はいつも肩を並べて、青い輝きを見つめて
 
私を抱きしめる優しい人は
幸せそうに頬を寄せて
 
『何時死んでも良い』
と、何度もつぶやいて。
 
本当は
 
この海は嫌いだった。
 
眩い光を眺めていると
瞼の奥がじいんと痺れてきて
 
自分をとりまく景色が
本当は全部幻なんじゃないかって
 
横に座るこの人が、泡のように消えてしまうんじゃないかって
 
 
<私の腕を引いて、何処かへ連れて行って> と、
 
あえぐ口からは言葉が出ずに
 
私は天からの光の雫を待つ、
海底に沈んだ魚のように
パクパクと浅い呼吸を繰り返しながら
 
ただ、彼にしがみつく
 
 
 
悲しいくらい綺麗な海のそばで
 
 
 
                     
2004.4.20
 

prev. index next

HOME