わんこの躾心得七箇条

 犬への躾は,犬が人間社会に上手く適合して,人と仲良く,快適に生活できるようにするために必要なもの。躾をすればそれ相応の賢いわんこに育つし,しなければ困ったわんこに育つ。躾ができるかどうかは,それは全て,飼い主の自覚と責任と知識と知恵と技術と忍耐と根気と熱意,そして最後は,この子のためにという愛情による。
 ここ書いてある躾を行うに当たっての心構えは,躾の基本中の基本である。ごく当たり前のことである。しかし,これを知っている,知らないが,わんこの幸せを左右することになる。
 飼い主とわんこが信頼関係で結ばれ,躾がきちんと出来れば,人とわんこの社会生活は益々楽しく,ハッピーなものに必ずなると、ハッピードッグは夜熟睡しながら考えている。
 しからば皆の衆,躾の心得たる七つの掟,しかと心得えられたく候!(笑)

第一条 ひたすら褒めるべし                上に戻る
 
 褒めると言っても,褒める方法,強弱,褒めるタイミングなど,犬の性格や躾の種別などによって様々であるが,何はともあれ,先ず褒めること,これが躾の大原則である。
 わんこには,群れに貢献したい,リーダーに従えたいという血が流れている。何かを上手に出来たときに褒めてやれば,それらの血が喜びに満たされ,次も同じようにしようという意欲が生まれる。
 躾は,褒めて褒めて褒めちぎる,という意識で丁度良い。
 もちろん,うまく出来たときと,わんこの方から飼い主のところにきたときだけ褒める。それ以外に褒めても,褒めの効果が低下する。
 


 
第二条 上手に叱るべし               上に戻る

 褒めるだけでは覚えてもらえない躾もある。そのようなものは叱ることで教えていく。
 叱り上手な飼い主は,躾を覚えさせるのが早い。
 褒めることと,叱ること,この二つをうまく組み合わせれば,わんこは必ず人の言うことを理解してくれる。

 注意が必要なのは,叱るときに目を見ないということである。
 目と目を合わすアイコンタクトは,犬と人の信頼の証であり,目を見て叱っていると,飼い主の目を見ると嫌なことが起きるとインプットされ,アイコンタクトをしなくなる。

 また,叱るのは,現行犯のときだけ。
 これは叱り方の鉄則である。あとで叱っても,わんこは何で叱られているのか分からず混乱するだけである。場合によっては,叱ることとは全く関係のないことで叱られていると思って,あらぬことを教え込んでしまうことがある。
 鶏は三歩歩いたら忘れるが,わんこは数秒過ぎたら忘れると心得ておく。

 叱る,と言えば体罰を連想する人がいるかも知れないが,あるときを除いて体罰は厳禁である。体罰は人とわんこの信頼関係を損ない,足で蹴れば足を,手で叩けば手を敵と見なすようになることがある。
 ちなみに,あるときとは,わんこが本気で人を咬んだときである。このときは,人も本気でわんこに体罰を与えなければならない。そのままにしておくと,間違いなくわんこは自分が勝った,自分がリーダーであると認識し,咬み癖のあるわんこになってしまう。
 臆病なわんこは恐怖から咬むことがあるが,この場合も,いかなるときでも人を咬んではいけないことを教えるために,体罰で臨む。
 もちろん,そのように咬むようなわんこにしたこと自体がそもそも問題ではあるが。
 
 


第三条 家族全員が意志の統一を図るべし     上に戻る 

 これには二つある。
 一つ目はわんこの行動の良し,悪しの判断の統一である。
 お父さんは何も言わないことを,お母さんは叱る,これではわんこは混乱して,どうしていいか分からなくなる。
 わんこのすること一つひとつに,家族全員がいい,悪いを統一する。
 ちなみに,わんこに善悪の識別能力はない。これは正しい,これは悪いことであるという判断はできない。代わりに,これをしたら良い(愉快な)ことがある,これをしたら悪い(不愉快な)ことが起きる,ということを判断基準に行動する。この点に,わんこの躾を上手くできるかどうかのヒントがある。

  二つ目はコマンドの統一である。
 叱るにしても,「ダメ」「ノー」「いけない」「こらー」「何してんの」などと色々言ったら,これまた犬は混乱する。家族全員が,コマンドを統一する必要がある。
 



第四条 名前を言わずに叱るべし         上に戻る

 多くの飼い主の大きな間違いが,名前を言ってわんこを叱っていることである。
 何か粗相をしたときに,つい「ポチ,だめじゃないの!」「こら,ポチ!」と名前を言って叱るが,叱るときに名前を言われると「名前」=「叱られる」=「不愉快」と覚えてしまう。こうなると,名前を呼ばれたら不愉快なことが起きると思って,飼い主のところに来ないわんこになる。




第五条 指示は普通の大きさで1回に止めるべし     上に戻る

 飼い主の中には,わんこが言うことを聞かないときに,声がどんどん大きくなる人,何回も何回も同じコマンドを言う人がいるが,これは大きな間違い。
 わんこは,一つひとつのコマンドを,単語(熟語)の長短やアクセント,音程などから覚えていく。したがって,いつも大きな声でコマンドを出せば,大きな声のときを指示が出たものと理解し,普通の音声では,自分に対するコマンドであると理解できない。
 同じように,1回で指示に従わないからと言って,何回も,何回も同じコマンドを繰り返し出していたら,連続して何回も言ったコマンドを一つの言葉=コマンドと認識し,1回言っただけではコマンドを理解出来なくなる。
 このような大きな間違いは,躾の方法を知らないことと,自分のわんこであれば自分の言葉ぐらい分かるはずだ(笑)というとんでもない思い違いが理由だろう。
 一方,1回のコマンドで,その指示に従わなかったときは,どうするか?
 例えば,「待て」のコマンドを出したが,わんこがそれに従わず動き出そうとした場合,躾の方法を知らない飼い主は,「待て,待て」を連発し始める。逆に,訓練に慣れた人は,動き出そうとした瞬間に「ノー」と言って動きを制止する。あるいは,動き出したら,無言でわんこを「待て」の最初の位置に戻し,そのまま元の位置に帰り,わんこが引き続き静止しているようだったら褒める。
 ちなみに,「待て」の訓練一つにしても,いくつかの段階を踏んで覚えさせていく。躾の方法を知らない(研究しない)飼い主は,このようなステップを飛び越えて最初から最終レベルの命令をするから,わんこは何のことか,にわかには理解できない。

 普通の大きさの声で,かつ,1回の指示でコマンドに従うように理解させれば,わんこライフは行動範囲がぐーんと広がる。



 
第六条 どのようなときも人がリーダーであるべし      上に戻る

 躾を行うには,わんこから人がリーダーと認められていなければならない。
 そもそもわんこは,リーダーと認めていない人の言うことは聞かない。いくら一生懸命にコマンドを出しても,トレーニングしても成果は期待できない。おやつを見せれば一時的にコマンドに従うが,これは信頼関係に基づくものではない。リーダーというのは言い換えれば,上位の者としての威厳であろうか。あるいは毅然として躾のできる人でもあろう。わんこはオオカミの代からそのような相手をリーダーと認識し,そして信頼してきた。リーダーとは,別に厳しいということではない。また,暴力的な飼い主は,リーダーでもなければ,飼い主の資格そのものがない。
 わんこにリーダーと認められるかどうかは,日常生活の全ての場面が関係している。例えば食事という一つの場面だけでなく,散歩や家の出入り,座る位置など普段の全てのことが係わっており,このうち,一つだけを改善すれば良いというものではない。トータルの問題だ。もちろん,リーダーと認めてもらえなければ,多くの場合,アルファ犬の誕生と相成る。
 わんこに対してリーダーになれない人は,犬を飼う資格はない。

 これらの中でも,特に飼い主が陥りやすい愛情のはき違え,いわゆる猫可愛がりは,アルファ犬育成の早道になってしまう。
 犬の祖先のオオカミの世界は,下位のものがアルファのところに行ってあいさつをする。
 したがって,人の方がわんこのところに行って「よし,よし」と撫でて可愛がるのは,わんこの側からすれば,「人の方が下位にあるから自分にご機嫌伺いにきた。」と認識してしまう。これはわんこが悪いのではなくて,犬の本質を理解していない飼い主に問題あるのだ。
 このようなアルファを芽生えさせるようなことをしないで,思いっきり可愛がるためには,わんこの方を人の元に呼ぶか,ストップか何かのコマンドを一つかけて動きを止める。これだけで人がリーダーであることを前提にできるのだ。そして,それから思う存分抱いて,撫でて,話しかけて可愛がればいい。

 そんなことは必要ないという人は,躾をせずに放任すれば,立派なアルファ犬が育つかも知れない。




第七条 忍耐が必要と心得るべし            上に戻る

 わんこの性格によって,躾を早く覚えるのもいるし,遅いのもいる。
 いくら教えても,なかなか覚えてくれないと,焦ったり,腹が立ったり,やり方に悩んだりする。
 しかし,考えてもみよ,である。相手は,何も知らない,言葉も通じない,感情もある,知能指数は人間と比べるべきも無いほど低いわんこである。直ぐに覚えてくれないのが当たり前である。普通は,同じことを何回も繰り返し,わんこに成功の喜びを覚えさせながら,徐々に,徐々に躾は進展していくものなのだ。本やテレビでを見ていると,直ぐに出来そうだが,現実はそうではないのだ。
 少々のことでサジを投げないで,粘り強く,根気強く,おおらかに,少しずつ教えていこう。それを楽しむようなつもりで。あ,1週間まえよりも少しだけ成長したかな,という位でいい。
 そのためにも,半年,あるいは1年ぐらいの期間で計画を立て,長〜〜〜〜〜い気持ちで,わんこにつき合ってもらおう。

                             
わんこの躾心得七箇条     
    第一条 ひたすら褒めるべし
    第二条 上手に叱るべし
    第三条 家族全員が意志の統一を図るべし
    第四条 名前を言わずに叱るべし
    第五条 指示は普通の大きさで1回に止めるべし
    第六条 どのようなときも人がリーダーであるべし
    第七条 忍耐が必要と心得るべし
Happy Dog
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