スコープサイト概論
 
スコープを使用しての射撃は技術の阻害要因である照準に対する不安を取り除く。確実な照準の保証はスコープの絶対的優位性を確固たる物にする。また逆にあまりに視認性の良い照準映像はスムーズなトリガーコントロールを困難にし、無意識の筋肉による調整は銃の静止を妨げたりもする。
ISSF射撃においてスコープ射撃の有用性はその据銃能力の射手自らの確認・認識と言う点に尽きる。それ以上のものは要素としては小さい。かつてスコープトレーニングに求めていたトレーニング内容は、現在では赤外線射撃分析装置によってとってかわられた。銃の動きはその絶対値として評価され、照準精度も単位時間内の照準の平均値が数値化されている。更には照準の優劣による撃発タイミングの良否まで赤外線装置は瞬時に射手に知らしめる。データベースはパーフォーマンスの状態から一般的に予測される得点まで暗示し、現在の成績とのギャップの原因究明の手助けをしてくれる。すなわち現在ではISSF射撃のトレーニングにおいてスコープの持つ価値は無くなったと言って過言ではない。
一方、スポーツ年齢の高齢化により射撃界のベテランに対する環境整備が始まっている。シニア種目の出現やマスターズ選手権の設置はその一例である。シニア種目ではスコープの使用が許されるが、スコープはベテラン選手に新たな可能性を与えた。照準に対する視認性の飛躍的向上は自己のパーフォーマンスに対する評価に正当性を与える。またその視界のよさはより強力な刺激となり、トリガーコントロールは新規の自動化が必要になるであろう。伏射競技では意識的なトリガーコントロールの妥当性もその選択肢として考えられる。
スコープの選択には若干の留意が必要である。
多くの人が最初に選択する項目はその倍率であるが、一般にスコープ射撃を実施するものの倍率はあまりに高い。3姿勢を実施するには12倍、伏射を専門とするものは16倍以下が標準である。24倍以上の高倍率では有効なパーフォーマンスの発揮には阻害要因(=照準の過精密、本体の重量、陽炎の顕著化)が大きすぎる。アイアンサイトで594平均以上の射手では使っても良いといった程度であろう。
レティクルは多分に個人的嗜好によるが、一般には細いクロスに小さいドットのものが適当である。スコープ射撃ではスコープそのものをセンターに合わせるのではなく、標的に印刷された数字に合わせるのが一般であるので(左)、狩猟用のドットの大きなタイプでは数字が大きなドットに隠れて照準が困難である。電子標的では白い台紙に1発射撃して照準用弾痕を作成して,その弾痕にドットを合わせる(右)。スコープのクリックは一般に移動量が大きいので最終的には照準点のやや右(上下左右)がゼロポイントであるといったこともある。また標的射撃では比較的動きの少ない画像を注視するのでパララックス(視差)調整機能は必須である。
銃器への装着はスモールボアライフルの場合安物のあり溝に締め付けるタイプで必要充分であるが、300mでは堅牢なタイプを使用しなければインパクトポイントがずれる。スモールボアライフルのアクションでは装着した際必要なアイリリーフが取れないので、スコープ本体を前方に装着するためのアダプターが必要になるであろう。(スコープは伏射姿勢で使用できるようには作られていない)
スコープを使用すると動きが見えすぎて当たらないと言われるが、そのとおりであるとすると技術が低いと言える。スコープをつけたからと言って銃が特別動くわけでもなく、よく見えて当たらないのは動きのコントロール能力に欠点がある。トリガーコントロールもマイクロサイトのそれに比べ特に困難なことはない。銃の動きが最も小さくなったタイミングと標的上への方向性を一致させ、そのまま引き金を絞るだけである。
スコープをつけると銃の重量が一気に増大するので伏射などでは左腕はかなり低くなる。規則に合致するようにスリングの再調整が必要になるであろう。同時に照準ラインが銃身線のかなり上方に位置するようになるので、チークピースの調整、頭部の直立化を強いられるであろう。逆に立射では姿勢がとりやすくなる射手も多い。
スコープを取り付けた当初は弾痕が標的を外れる場合も多いので、競技前にはつけっぱなしにした方が無難である。また初めて使用する際はボアサイティングでできるだけ黒点に近いところで弾が通過するようにしておくことも重要である。

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