「水甕」  石綿清子詩集

        あさお社    頒布価格2000円


 「流れの行方」

深い闇の底に目覚めて

瀬音に鈴のひびきを聞いている

光の届かない長い季節が

屈折しながら流れている川

何処から 何処へ流れて行くのか

長い時間であったのか

瞬時のような気もする

私は一茎の水草になって

水泡を抱いて漂っている


私の流されてゆく川がある

母は私の中に雫のような鈴を沈め

その音色にみちびかれ

救われてきた日々

もう躰を張って児たちを守り

淀みの底を這い廻る

季節は終わったのだ


流れを振り向けば

母がいて 父もいる

若い兄も その息子も

きらきら背を向けて流れている

貧しさに間引かれた 小さな命も

透きとおった小魚になって

私と一緒に流されている




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