驟雨の食卓・田中 武詩集    

         頒価2000円 紙鳶社


砂の宇宙船


休日は公園に行く
旅をするように。
公園には真昼の砂が満ち
地中の暗黒がいっそう深い。
そのかがやきの縁に沿うて
子どもが二人
半透明の裸足で駆けてくる。
小さな歩幅のあとを
風が吹き起こると
一枚のティッシュペーパーが
新しい神の啓示を受けて
草の大海の
遥かな航海へ乗り出していくと見えた。
さらば
世界の果てには
驚異に満ちた公衆便所もあるよ
幸運を祈るのみ。
ただ とりあえず私には
死の危険もなく
預金通帳や資金繰りの喧噪から
生け垣のように青く隔てられて
入口の柵からベンチまでの
数十秒の時を移動している。
私が通過しきれない
足元の測り難い砂粒の間隙を
一隻の宇宙船が翔びつつある
(かも知れない)
その時を。


「新刊」に戻る.......「TOPに戻る」

本のお申し込み、お問い合わせ等はここをクリックして下さい。