少年の頃
ドドン ドーン 地響き
家を飛び出してみると
岩鼻火薬製造所に火の手があがった
晩秋の午後
跡地に建った美術館で
フランス象徴派展をみた
ルノワールの裸婦の前で
私は釘付けになった
妖艶な裸婦への思いではなく
ルノワールが語りかけるのだ
夜になると
森は死者の影を引きずって
美術館の階段を這いあがってくる
そう言えば
何十年もの間には
数え切れない程爆発したが
死んだ人の数は秘密だった
閉館時刻
美術館を出ると
強い風になっていて
あり続ける森の樹々をきしませていた
激しく迫るきしみは
焚殺された死者たちのうめきだ