富沢 智詩集・あむんばぎりす

            榛名まほろば出版 文庫サイズ 頒価630円

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あぶあぶ


死に神が腰掛けているような
鎌のかたちした月が西の空にあって
もちろん夜明け前
ふわふわと家々をかすめて
飛んで行くのはいいものです

ぼくはそのときどこにいるかというと
自分の家の
妻の寝ているシングルベッドのとなり
やや硬めのセミダブルベッドで
どんな顔をしているのやら

まあ お互い
はっきりと見つめ合ったら
事態はややこしくなってしまいますから
知らぬふりして
飛んで行きましょう

みんなこんなに無防備に
この時分には眠りこけているなんて
空からぱらぱらと毒撒いてやりましょうね
もっとよく眠れますように

詩は真面目な冒険の一つです
ときどきこう言っておかないと
いいですか
何も無いということになってしまいますよ
そのように詩は滅びているのです

ぼくがこうして
それだけでは何でもないことを
しているのも
ちぇ
まあ
なまぐさいものほしさですがね


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