その木は
秋が とりわけ時の擦過の緩い秋の午後の始めが好きで
さらに
中世の神秘思想が幽かに匂う
眠そうに弾くサティに酔うらしく
この水辺でその音を聴いてしまったのだ
たしかに ここは
ほどよい湿り気のある風が
淡墨色の冥府をぼんやり想像させるし
ここまで来ればちょっと留まる気にもなり
最後の背伸びなどひとつして
みな もって生まれた質の静かな木になる
静かであること
間遠な刻み方をする時があること
ものの輪郭が融けていること
ターナーの死に場所と思えなくもないこと
見ているつもりで見てないこと
わけなどないのにわけのあること
すべてひっくるめて静かなとこ
静かな木のあるとこ