「途上」  堤 美代詩集

        煥乎堂    頒布価格1800円


 「途上」

秋の陽に

百万の花びらが光っていた

山の斜面を

埋めつくして咲いた

コスモスの花の群れは

丘の上に立って眺めると

いっせいに

陽の射す方角に

ふりむいていた


花に

ヒトの姿を見られていた

ホモ サピエンス サピエンス

そこに そうして

在るのですか

坂の途中で

しばし 立ち止まって

ヒトのカタチをして


花に

見られていた

手にはなにも持たず

丘の上に

立っていた


山の明け方の

冷気と共に目覚める

未生のたましいの

百万の視線に射られて

立ちすくんでいた



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