堀江泰壽詩集・ふりかえった窓

               紙鳶社 頒価2000円

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「傘をさした人」


午前五時の水気をはらんだ道
傘をさした人が散歩をしている

霞みがかった重い空が傘にのしかかっていて
霧雨は旋律をきざむでもなく
辻に立つ街路灯は
明かりをこなごなにくだかれている

しずかさを渡っていく人
歩みは軽やかそうだが
どのような人なのかさだかでない

時たま聞こえる小鳥のさえずり
静寂をいっそう深くしている

昨日までの暑い夏は どこにもない
朝顔の赤い花もすずよかに揺れている
関越を走る尾灯も音をなくして
さめやらぬ夜の名残をぬけていく

あの 傘をもった人
思い出を歩みつづけた私だったかもしれない


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