霞みがかった重い空が傘にのしかかっていて 霧雨は旋律をきざむでもなく 辻に立つ街路灯は 明かりをこなごなにくだかれている
しずかさを渡っていく人 歩みは軽やかそうだが どのような人なのかさだかでない
時たま聞こえる小鳥のさえずり 静寂をいっそう深くしている
昨日までの暑い夏は どこにもない 朝顔の赤い花もすずよかに揺れている 関越を走る尾灯も音をなくして さめやらぬ夜の名残をぬけていく
あの 傘をもった人 思い出を歩みつづけた私だったかもしれない