詩集「廃しつ病床の愛の歌」    平石佳弘 

                 詩人会議出版  1500円/


「榛名山麓の大衆食堂」

久しぶりの雨だった

ふわっと土埃りがして

雨のかおりが

開け放たれた窓からしのび入る

秋の匂いが染みた

この夕餉

薄切りの豚を焼いて食う

こげ目のついた豚を

雨が降っているが

夕餉を終えてこれから夜業の人もあるのだ

豚飼いの友が

牡豚は

生まれて日もなく去勢すると言うアメリカでは速成肥育のため

眼もつぶす

からし醤油で睾丸を食うと

またうまいと友は言った

飼われ殺された豚を食べた

雨は降りやまず

開けた窓を半分閉じる



「新刊」に戻る.......「TOPに戻る」

本のお申し込み、お問い合わせ等はここをクリックして下さい。