詩集「虫」    岩井達也 

                 紙鳶社/東国叢書UD


「おとしぶみのソネット」

庭におちた おとしぶみは

文字をしるさず

追憶のみどりへ さそう

ひかりと風のたよりだった


はやしの隠し沼の

ほとりに立ち

あさつゆを踏んだ登山靴は

ほこりをあびて納屋にころがり


双眼鏡はひゞわれ 老いたレンズは

のぞきみた つばさたちのひらめきを

ゆめみて ひさしくねむっている──


そんな日々のくらしにとゞいた

おとしぶみは忘却から四月にめばえる いのちを巻いて

潅木のしげみの径へ おれをさそうたよりだった



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