文字をしるさず
追憶のみどりへ さそう
ひかりと風のたよりだった
はやしの隠し沼の
ほとりに立ち
あさつゆを踏んだ登山靴は
ほこりをあびて納屋にころがり
双眼鏡はひゞわれ 老いたレンズは
のぞきみた つばさたちのひらめきを
ゆめみて ひさしくねむっている──
そんな日々のくらしにとゞいた
おとしぶみは忘却から四月にめばえる いのちを巻いて
潅木のしげみの径へ おれをさそうたよりだった