詩集・春夏猫冬　　　　　　　　大橋政人

　　　　　　　　　　　　　　　　　思潮社　　　頒価２２００円

「残業なし」

私たち二人は

一日働いて

ネコたち五匹は

一日

庭や家のまわりで遊んで

夕方

玄関のところでみんな再会する

玄関を開けると

すぐ水炊み場へ走るのもあるし

二階の寝室の

指定席の籐椅子にかけのぼるのもいる

新入りのカナちゃんは

私の座椅子の肘当てに

ちょこんと座ることを覚えて六十日になる

朝の別れから

夕方の再会まで

私たち人間も一日、何かをして

ネコたち五匹も一日、何かをして

夕方になると

玄関に集まってくる

たいてい

みんな

残業なしだ

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