福田尚美詩集・母の郷      

         頒価2200円 花神社


「形」


腐葉土をつき上げ 頭をのぞかせた茸は

ぐんぐん大きくなってゆく

スローモーション・ビデオではなく

週刊誌大の 六枚のレントゲンフィルムに

私の腎臓が

造影剤をのみこんで

五分ごとに のびてゆく様子が写っている

実物の十二分の一

医師は 内臓の全てがひどい下垂と言い

腎孟炎の疑いは晴れ

先天的腎臓奇形と診断された


普通 西洋梨のような胆のうが

私の場合繭形をしていて働きが悪い

胃袋は 極度の下垂奇形

少し右側を向いている 気儘な心臓は

数分間に一回ずつさぼったり

深夜 冠状動脈が小休止したりして

心拍の飛んだグラフが

医師を慌てさせる

血中白血球は 標準の半分

視力は○・〇二

右耳の鼓膜は破れたまま・・・・・

と 重ね合せて

普通の形ではない 私の躯で想うこと

例えば この詩の一行が

どんな形なのか その歪み具合が解らない


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