詩集・どこかで        篠木 健

                 風書房   頒価2000円


「漂流」

もう何ケ月 何年 漂流しているのか これは船ですか それと

もいかだですか 破壊された船の木片ですか


おまえの荒れる海で 凪いだ海で 私は漂い流れている 心地よ

く それとも喘ぎ 呻きながら


漂う私は 少年の心で救助を待っている でも誰が救けるのか

君は私を救けることは出来ない 君の眼の中にこの海は存在しな

い ましてや 漂う私が見えるわけでない もし見たとしたら

多分 草原や街中だ 救助者にふさわしいのは おまえなのだが

私は知っている おまえもまた 深く うちのめされているのを

今日 目算がくるった 束の間のやすらぎを得る日だったのに


唇を噛む私 こだわる私 戸惑う私 私は何をして来たのか 私

が奪われたのは歳月なのだ 今 得体の知れぬものが 私の中を

駆け抜けていって


風吹き荒ぶ日にも 暖かい日にも おまえはあった 非望とは何

か 私は何を求めたか


荒れ狂う海を 持つことも知らない おまえの笑顔

けれど 私は視なければならなかった

おまえの海



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