古い宿場町で
『詩人の墓』という詩集を買って
中村家という鰻屋で
来世の鰻を食べた
食べるまでに一時間を要し
とっぷりと日も暮れて
昔ながらの夕日を想いながら
ごまあえ
にこごり
エビスビール
詩じゃないことばかりしゃべりつづけ
ぽりぽりと音をたてて
お新香の胡瓜と大根を食べた
三つ葉の浮いた肝吸いは
濁りのない味わい
ほろ酔いで
身も心も透きとおって
外へ出たら
雨が降っていた
広げた傘の中にだけ世界はあった
見えない肩を寄せ合って
濡れて
ふゆのゆうれいたちは
現世の駅に辿り着いた