2022高松宮記念


白毛一族の異色の快足

 サンデーサイレンスUSA産駒がスプリントのG1級に初めて出走したのが1997年高松宮杯のチアズサイレンスだった。初めて2着となったのが延べ6頭目の2000年高松宮記念のディヴァインライトで、これは8番人気と人気薄だった。それから2年半後、2002年スプリンターズSではビリーヴがサンデーサイレンスUSAに初めてスプリントのタイトルをもたらした。その後ビリーヴは翌2003年の高松宮記念にも勝ち、同年のスプリンターズSはやはりサンデーサイレンスUSA産駒のデュランダルが勝った。2005年高松宮記念はアドマイヤマックス、2006年高松宮記念もオレハマッテルゼ、正規のG1となった2007年高松宮記念-G1はスズカフェニックスとペールギュントが1、2着を占めて馬連で40,250円、馬単で52,980円の大波乱となった。馬券的には大波乱だが、サンデーサイレンスUSAによる短距離部門攻略はこの時点で完成したといえる。日本がパート1国となってからのスプリントG1におけるサンデーサイレンスUSA系の種牡馬成績を下表に示した。この部門のエースだったのはフジキセキで4勝を挙げているが、これもブレークスルーまでには意外に時間を要し、産駒初出走は2002年高松宮記念のテンシノキセキで、初勝利はそれから6年後、延べ16頭目のファイングレインが初勝利だった。一方、ダイワメジャーは産駒初出走から3年目、延べ3頭目のコパノリチャードが2014年高松宮記念-G1に勝った。その後、勝利からは遠ざかっているが、2016年スプリンターズS-G1でソルヴェイグが3着、2018年高松宮記念-G1でナックヴィーナスが3着、昨年のこのレースとスプリンターズS-G1でレシステンシアが連続2着と実績を重ねている。ディープインパクトは2014年高松宮記念-G1に産駒が初めて出走し、その年のスプリンターズS-G1でレッドオーヴァルが3着となった。翌2015年の高松宮記念-G1で3着となったミッキーアイルは同年のスプリンターズS-G1で4着、2016年には高松宮記念-G1で2着、スプリンターズS-G1も2着と好走を続けるが、勝てないままに時は過ぎ、2020年になってグランアレグリアがスプリンターズS-G1を快勝した。ためにためただけあって、歴史的異才ともいうべき大物スプリンターが出現したことになるが、2007年からの15年間でサンデーサイレンスUSA系は7勝2着11回3着11回。振り返れば馬券圏内の3分の1を占めていたことになる。他系統にも比較的開かれた場所であったスプリントG1も数的不利(他部門に比べればですよ)をはねのけて馬券に絡んでいるということになる。
 スプリントG1を勝てなかったミッキーアイルはその後マイルチャンピオンシップ-G1に勝ち、NHKマイルカップ-G1と合わせて1600mのG12勝ということになった。それでも、本質はスプリンターであったのではないかという可能性も残っており、そういうことを産駒が証明する場合もある。◎メイケイエールはミッキーアイルの初年度産駒でデビューから重賞2つを含む3連勝であっという間に代表産駒の座を固めたが、クラシックを迎えると自身のスピードに苦労することになった。サンデーサイレンスUSA3×4、デインヒル4×4の同年代の大種牡馬の近交を重ねた配合が特徴的だが、デインヒル3×3には香港スプリント-G1のビートザクロックがいるように、スピードが強調される傾向があるのかもしれない。母のシロインジャーは4戦未勝利で馬名の通り白毛。祖母は関東オークス、クイーン賞、TCK女王杯に勝ったユキチャンで、祖母シラユキヒメの孫に桜花賞馬ソダシがいる。白毛という話題性を別にしても近年の活躍馬の密度が高いファミリーで、同期の近親ソダシを追ってのG1制覇があるかもしれない。


サンデーサイレンスUSA系の
スプリントG1成績
種牡馬名1着2着3着着外
フジキセキ44119
  勝ち馬:ファイングレイン、キンシャサノキセキ×2、ストレイトガール
ディープインパクト13219
  勝ち馬:グランアレグリア
ダイワメジャー12215
  勝ち馬:コパノリチャード
サンデーサイレンスUSA11211
  勝ち馬:スズカフェニックス
サクラプレジデント0107
マンハッタンカフェ00114
ジャスタウェイ0013
オンファイア0011
ステイゴールド0011
アドマイヤベガ0006
ハーツクライ0005
キンシャサノキセキ0004
ゴールドアリュール0004
ダンスインザダーク0004
キズナ0003
オレハマッテルゼ0003
ディープブリランテ0002
アグネスタキオン0002
ミッキーアイル0001
トーセンラー0001
リアルインパクト0001
アドマイヤオーラ0001
ドリームジャーニー0001
ネオユニヴァース0001
アドマイヤマックス0001
メイショウオウドウ0001
バブルガムフェロー0001
合計71111132
2007年以降の高松宮記念G1とスプリンターズSG1を集計

 ステイゴールドの系統はサンデーサイレンスUSA系にあって最もスプリントに縁がなさそうな印象があって、実際に芝1200mの重賞勝ち馬はいないのだが、昨年はこのレースでインディチャンプが3着となった。ダートならオルフェーヴル産駒のジャスティンがいますね。ドリームジャーニー産駒の○トゥラヴェスーラは母の父がアドマイヤジコーン。同馬は安田記念での大復活劇が印象に残りがちだが、その前後で高松宮記念2着、スプリンターズS2着の実績がある。そして、種牡馬としてはスプリンターズS-G1のアストンマーチャンを送り出したわけだが、これが本馬の母の全姉にあたる。オルフェーヴル産駒にいきなりブリーダーズCディスタフ-G1を勝つような力が備わっているところを見ると、その全兄ドリームジャーニーにも同様の驚異的なポテンシャルを期待できないことはない。

 ▲レシステンシアは1200mで崩れないダイワメジャーらしさの一面を示している。デインヒル系スプリンターのリザードアイランド産駒の母はアルゼンチン産で芝2200mのフィルベルトレレナ大賞典-G1に勝った。祖母の父がポリグロートだから、デインヒル系×サドラーズウェルズ系の英愛クールモア血統の南米バージョンとなる。リザードアイランドの祖母ナンバーとサドラーズウェルズは名牝スペシャルを祖とする叔母と甥の関係。このあたりの技巧はヌレエフとナンバーの組み合わせにサンデーサイレンスUSAを重ねたメイショウマンボに通じるところもある。

 △ナランフレグは4代母ホウヨウクインが天皇賞(秋)のホウヨウボーイを生んだ名牝。そこにノーザンテースト、タマモクロス、ブライアンズタイムと配合されたのが母。重賞入着はあっても勝てなかったファミリーだが、名血を揃えた配合。オルフェーヴル産駒のシャインガーネットはベルモントS-G1のサミング以来活躍馬の途切れないファミリー。


競馬ブックG1特集号「血統をよむ」2022.3.27
©Keiba Book