2021宝塚記念


ディープインパクトに逆らうな

 牝馬の時代といわれて久しく、その流れを受けて今年は天皇賞(春)-G1でカレンブーケドールが3着に、ウインマリリンが5着に入った。天皇賞(春)には牝馬の出走自体が少ないが、JRAのグレード制が敷かれた1984年以降の38年間で26頭、3年に2頭の割合では出走していることになる。馬券圏内に入ったのは1955年2着のセカイイチ以来76年ぶりの快挙だった。このことだけを見れば、距離が長くなるにつれて牝馬の活躍が難しくなると見ることもできるが、2005年のこのレースで7着だった豪州の名牝マカイビーディーヴァGBはメルボルンカップ-G1を3連覇しているし、英国のゴールドカップ-G1や仏国のカドラン賞-G1といった4000m級の超長距離戦で牝馬が勝つことはさほど珍しくない。距離克服能力という点で、先天的な性差はない、またはあまりないと考えられそうだ。天皇賞(春)-G1はそのひとつの証拠となり得る結果だった。
 宝塚記念も1966年にエイトクラウンが勝利したものの、牝馬の活躍が難しかったレースで、下表にある通り1984年グローバルダイナの3着や1993年イクノディクタスの2着は大きな驚きを伴った記憶がある。逆に、その後のダンスパートナーやエアグルーヴの3着には、これほどの名牝でも勝てないのかという驚きがあった。ブレークスルーは21世紀に入ってからのスイープトウショウの勝利だった。それに続いてディープインパクト牝馬が大量参入する時代を経て近年に至ると、一流牝馬2キロのセックスアローワンスは牡馬に過度の負担を強いるものではないかと考える者も現れるようになった。そのような流れを受けて、今回は1996年と2015年以来、5頭の牝馬が出走する。頭数では半分以下でも、馬券の売上では過半数を大きく上回るのではないだろうか。
 ディープインパクト産駒は今年ここまで国内でグレード15勝、うちG1が5勝。ここ3年は同じくらいの高水準で推移しているが、そこにラヴズオンリーユーのクイーンエリザベス2世カップ-G1、スノーフォールのオークス-G1を加えるとG1・7勝となる。うち4勝が牝馬によるものだから、今ならディープインパクト牝馬は世界一強いといって間違いではない。◎レイパパレは母がチューリップ賞2着、ローズS2着のシェルズレイ。産駒で本馬の全兄にあたるシャイニングレイはホープフルS-G2と、長いブランクのあとCBC賞-G3に勝った。ウイニングチケット産駒の祖母オイスターチケットはすずらん賞など2勝を挙げ、ファンタジーSで2着となった。産駒ブラックシェルはNHKマイルカップで2着となり、日本ダービーでは3着となった。5代母モンテホープの産駒には天皇賞(春)のリキエイカンがおり、孫のスズカコバンは1985年のこのレースの勝ち馬。6代母トサモアーは阪神3歳Sに勝ち、桜花賞と菊花賞で2着となった。第三スターリングモア、スターリングモア、第九フロリースカップを経てフロリースカップGBに遡る。1907(明治40)年に小岩井農場によって輸入された1904年英国産のフロリースカップGBの子孫からは100年を超えてコダマ、キタノカチドキ、スペシャルウィーク、ウオッカら多くの一流馬が途切れることなく現れた。大種牡馬ディープインパクトとの間にひとつのピークを設けるにはそろそろラストチャンスといえるタイミングだが、それに合わせるかのように大物を送り出したということになる。3代母の父がトウショウボーイ、ウイニングチケットの母の父がマルゼンスキーと血統表には歴史的名馬の血がしっかりと刻み込まれている。同時に、クロフネUSAは母の父として本馬とクロノジェネシス、父としてソダシを送るなど死後に強く存在感を示している。古くしっかりとした土台にディープインパクト×クロフネUSAの本年の流行を載せたことになる。


宝塚記念に見る牝馬の躍進 (5着以内を抜粋)
年度頭数牝馬馬場着順馬名年齢父馬斤量人気勝ち馬(2着馬)
1960913オーカントシハヤ535ホマレーヒロ
1962714ミスケイコライジングフレームIRE534コダマ
1964732パスポートパールダイヴァーFR564ヒカルポーラ
5ミルフオードメイヂヒカリ546
1965623パスポートパールダイヴァーFR584シンザン
1966811エイトクラウンヒンドスタンGB564(ハツライオー)
1972712タイヨウコトブキベンマーシャルGB534ショウフウミドリ
19761123トウコウエルザパーソロンIRE548フジノパーシア
19811324ハギノトップレディサンシーFR542カツアール
19831325ヤマノシラギクオーバーサーブUSA5413ハギノカムイオー
19841533グローバルダイナノーザンテーストCAN5410カツラギエース
19851125グローバルダイナノーザンテーストCAN557スズカコバン
19931122イクノディクタスディクタスFR548メジロマックイーン
19961353ダンスパートナーサンデーサイレンスUSA563マヤノトップガン
4ヒシナタリーSeattle Slew5210
19971223ダンスパートナーサンデーサイレンスUSA564マーベラスサンデー
19981323エアグルーヴトニービンIRE563サイレンススズカ
5メジロドーベルメジロライアン566
20051531スイープトウショウエンドスウィープUSA5611(ハーツクライ)
20101822ブエナビスタスペシャルウィーク561ナカヤマフェスタ
20111612ブエナビスタスペシャルウィーク561アーネストリー
20131113ジェンティルドンナディープインパクト561ゴールドシップ
20141243ヴィルシーナディープインパクト568ゴールドシップ
5デニムアンドルビーディープインパクト566
20151652デニムアンドルビーディープインパクト5610ラブリーデイ
3ショウナンパンドラディープインパクト5611
5ヌーヴォレコルトハーツクライ563
20161721マリアライトディープインパクト568(ドゥラメンテ)
20171113ミッキークイーンディープインパクト564サトノクラウン
20181624ヴィブロスディープインパクト563ミッキーロケット
20191211リスグラシューハーツクライ563(キセキ)
20201821クロノジェネシスバゴFR562(キセキ)
1960年(第1回)は1800m、1961〜1965年は2000m、第1回からの牝馬の通算成績は(5.6.11.57)

 ○クロノジェネシスは昨年のパフォーマンスを再現できれば負かせるものは誰もいないだろう。ただ、強烈な内容だったからこそ、それがピークという可能性もなきにしもあらず。父のバゴFRは3歳で凱旋門賞-G1を快勝したあと、4歳時は緒戦のガネー賞-G1には勝ったものの、あとはキングジョージ6世&クイーンエリザベスS-G1で3着、凱旋門賞-G1も3着など3歳時の内容から考えると物足りない善戦止まりが多く、ジャパンカップ-G1の8着で現役を終えた。その父の天才ナシュワンに似て、長期君臨型ではないかもしれない。

 世界最強ディープインパクトガールズのもう1頭▲カレンブーケドールは母の父がストームキャット系の万能型スキャットダディ。母ソラリアCHIはスキャットダディがチリで供用された際の産駒で、牡馬相手のエルダービーG1を含むチリG1に3勝。ディープインパクト×ストームキャットの最新発展形と見ることもできる。

 △ユニコーンライオンIREは父ノーネイネヴァー自身がスプリンターだが、父系祖父がスキャットダディなので、中長距離方面に発展する可能性もある。母の父ハイシャパラルはサドラーズウェルズ直仔のステイヤー。


競馬ブックG1増刊号「血統をよむ」2021.6.27
©Keiba Book