2021安田記念


歩調を速めて父に追い付け

 5月の末までに国内のG1は10レースが終了し、そのほか海外で日本調教馬が出走したG1はドバイ4、香港2、米国1を数えた。その結果を種牡馬別に集計したのが下表。ディープインパクトの首位は予想通りといえるかもしれないが、この期間のG1・5勝は2019年の6勝(日本調教馬の海外出走を含む)に次ぐ好成績。例年は3勝前後にとどまっていることを考えると、晩年を迎えていよいよ勢いを増している。先週の東京優駿-G1の結果を見ても、大勢ではまだまだディープインパクトには逆らえないということだ。一方で、ざっくりG1の半分はディープインパクト産駒以外が勝っているのも事実。20世紀生まれのクロフネが意外にも初めてのクラシック勝ち馬を送ったり、上昇中のロードカナロア、エピファネイア、更には産駒初G1勝ちのゴールドシップら、局地的には逆転可能な力を秘めた勢力も台頭してきてはいる。5頭出しのディープインパクト産駒は強力だが、最有力の女王グランアレグリアはまさに昨年自身が下したアーモンドアイと同じヴィクトリアマイル-G1勝利からここへのステップ。これは今まで延べ5頭が挑んで2009年のウオッカだけが成功し、アーモンドアイを含む4頭が敗れている。付け入る隙がないわけではない。
 アーモンドアイと同じロードカナロア産駒が昨年のリベンジとなる父仔制覇を果たすとするとでき過ぎのようにも思えるが、三津谷騎手の引退戦重賞制覇など、今年ここまでいろいろでき過ぎといえる結果を見てきた。競馬にはそういうことがよくある。◎ケイデンスコールはロードカナロア産駒の2016年生まれ。ひとつ上の同じ父、同じ厩舎のダノンスマッシュが覚醒したのに触発されたわけでもないだろうが、今年に入って重賞2勝を挙げた。新潟2歳S-G3に勝って長い不振に陥り、そのまま浮上しなければ早熟だったということになるが、この成績なら早くから素質を示した大物が目覚めたと考えることもできる。母インダクティがハーツクライ産駒でもあり、その可能性は大きいのではないだろうか。アレミロードUSA産駒の祖母ホールオブフェイムは2勝を挙げ、産駒に2度の中山記念を含む7つの重賞に勝ったバランスオブゲーム、アルゼンチン共和国杯-G2など重賞6勝のフェイムゲームを送った。3代母ベルベットサッシュはディクタスFR×ダイナサッシュ(その父ノーザンテーストCAN)という配合だから、マイルチャンピオンシップのサッカーボーイや、ステイゴールドの母ゴールデンサッシュの全きょうだいにあたる。種牡馬としてのステイゴールド系の活躍と同時進行で、この牝系自体からジャパンカップ-G1のショウナンパンドラ、京成杯-G3のベルーフ、新潟2歳S-G3のフロンティアら多くの活躍馬が出ている点は特筆すべき。ロードカナロアはミエスクの母の父プルーヴアウト経由でグロースターク、祖母の父コーモラント経由でヒズマジェスティというリボー産駒の全兄弟の血を受けていたが、本馬は祖母の父アレミロードUSA経由でやはりリボー直仔の大物トムロルフの血を受けた。いわゆる「ノーザンディクタス」の土台にサンデーサイレンスUSA、キングマンボ、ストームキャットを載せ、周辺に3本のリボーの血を配した構成はG1でも通用するだけの爆発力を秘めていそうだ。


本年5月までの種牡馬別G1成績
順位種牡馬名生年1着2着3着着外主な成績(3着以内)
1ディープインパクト200255433東京優駿(シャフリヤール)、天皇賞(春)(ワールドプレミア、3着:カレンブーケドール)、大阪杯(レイパパレ、3着:コントレイル)、クイーンエリザベス2世C(ラヴズオンリーユー、2着:グローリーヴェイズ)、ヴィクトリアマイル(グランアレグリア、2着ランブリングアレー、3着:マジックキャッスル)、2着:ドバイターフ(ヴァンドギャルド)、2着:優駿牝馬(アカイトリノムスメ)、2着:桜花賞(サトノレイナス)、3着:ドバイシーマクラシック(ラヴズオンリーユー)
2エピファネイア20101114皐月賞(エフフォーリア)、2着:東京優駿(エフフォーリア)、3着:クイーンエリザベス2世C(デアリングタクト)
3ロードカナロア200811010高松宮記念(ダノンスマッシュ)、2着:ドバイゴールデンシャヒーン(レッドルゼル)
4American Pharoah20121000フェブラリーS(カフェファラオUSA)
5Kingman20111001NHKマイルC(シュネルマイスター)
5ゴールドシップ20091001優駿牝馬(ユーバーレーベン)
5クロフネUSA19981001桜花賞(ソダシ)
8キズナ201002282着:天皇賞(春)(ディープボンド)、2着:NHKマイルC(ソングライン)、3着:桜花賞(ファインルージュ)、3着:優駿牝馬(ハギノピリナ)
9キングカメハメハ200102092着:ドバイワールドカップ(チュウワウィザード)、2着:フェブラリーS(エアスピネル)
10バゴFR200101202着:ドバイシーマクラシック(クロノジェネシス)、3着:東京優駿(ステラヴェローチェ)、3着;皐月賞(ステラヴェローチェ)
11ドゥラメンテ201201012着:皐月賞(タイトルホルダー)
12ディープブリランテ200901022着:大阪杯(モズベッロ)
13ダイワメジャー200101032着:高松宮記念(レシステンシア)
14Frankel200800103着:NHKマイルC(グレナディアガーズ)
14スタチューオブリバティUSA200000103着:フェブラリーS(ワンダーリーデル)
16ステイゴールド199400113着:高松宮記念(インディチャンプ)
海外で出走した日本調教馬を含む

 父仔制覇は達成されればニホンピロウイナー=ヤマニンゼファー、エアジハード=ショウワモダンに続く3組目となり、○グランアレグリアによる連覇がなれば安田賞時代の1952年、1953年のスウヰイスーを含め、ヤマニンゼファー、ウオッカに次ぐ4例目となる。母のタピッツフライUSAはタピット産駒にときどき現れる芝馬で、配合的にはニジンスキー4×4の近交が特徴。現役時はジャストアゲイムS-G1、ファーストレディS-G1を含む3つの重賞勝ちをすべて8Fで挙げた。ディープインパクト×タピットという日米チャンピオン種牡馬同士の配合で正統派のマイル・チャンピオンが出たことはある意味計算通りなのだろうが、競馬で計算通りに運ぶことの難しさを考えると素晴らしい成果といえる。

 3歳馬の勝利は2011年のリアルインパクトが最後だが、そもそも挑戦数が少なく、グレード制が設定された1984年以降、全部で7例しかない。馬券圏内となったのは上記のほか1997年のスピードワールドUSAの3着だけで、あとは2桁着順に終わっている。▲シュネルマイスターは8戦7勝G14勝の名マイラー・キングマンの産駒。1歳上のパレスピアは現在8戦7勝G13勝で父に追い付き追い越すべく活躍を続けている。本馬が日本での代表産駒としてこの父仔に似た成績を残すとすれば、ここから再び連勝モードに入るはずだ。

 △サリオスはシュネルマイスターと同じ3代母。ドイツ血統の小ブームが認められるだけに怖い。


競馬ブックG1増刊号「血統をよむ」2021.6.6
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