この春の高松宮記念-G1ではロードカナロアとダノンスマッシュの父仔制覇が達成された。当然そんなことはサクラバクシンオーとその息子たちがやっているだろうと思われるところだが、これはキングヘイロー〜ローレルゲレイロに続く2例目。サクラバクシンオー自身はスプリンターズSを連覇して、産駒のショウナンカンプとビッグアーサーが勝ったのは高松宮記念だった。下表は大レースの親仔制覇の一覧。大阪杯はオルフェーヴル〜ラッキーライラックの父娘制覇があるが、父が勝ったときはG2なので含めていない。親仔がいずれもG1に勝つのも難しいことだが、同一レースとなると更に難易度が増す。その中で、さすがにクラシックと呼ばれるレースは親仔制覇の例が多く、距離は長い方が短いより成功例が多い。短い方は歴史が浅いという面もあるが、サクラバクシンオー的なスプリント専業種牡馬がなかなか出現しないことをみても、意図して短距離馬を作ることは実は難しいのかもしれない。 ダノンスマッシュの香港カップ-G1と高松宮記念-G1父仔制覇によって、ポスト・サクラバクシンオーの地位に就いたロードカナロアは今回3頭出し。中でも軌道に乗った◎ダノンスマッシュの中心は動かしがたい。3歳時から同厩の先輩でもある父に似た戦績を残していたこともあって、大きな期待がかけられていたが、父よりはいくらか遅い出世となった。母スピニングワイルドキャットは米国の芝8.5Fで1勝。その父ハードスパンはダンチヒ晩年の大物で、ケンタッキーダービー-G12着、プリークネスS-G13着、ベルモントS-G14着と米三冠で快足を生かして健闘し、夏に7FのキングズビショップS-G1に勝った。祖母ハリウッドワイルドキャットはブリーダーズCディスタフ-G1など3つのG1を含め2歳時から4歳時までコンスタントに活躍して12勝を挙げた名牝。3代目に並ぶ種牡馬はキングマンボ、ストームキャット、ダンチヒ、クリスエスと大物ばかりで、ミスタープロスペクター4×4の近交となっている。隙のない良血で、G1級に達すれば長くそのレベルを維持できそうだ。 |
大レースの親仔制覇 | ||||
レース | 年 | 親 | 年 | 仔 |
フェブラリーS | 2003 | ゴールドアリュール | 2010 | エスポワールシチー |
2014 | コパノリッキー | |||
2015 | コパノリッキー | |||
2017 | ゴールドドリーム | |||
高松宮記念 | 2000 | キングヘイロー | 2009 | ローレルゲレイロ |
2013 | ロードカナロア | 2021 | ダノンスマッシュ | |
皐月賞 | 1964 | シンザン | 1985 | ミホシンザン |
1973 | ハイセイコー | 1990 | ハクタイセイ | |
1976 | トウショウボーイ | 1983 | ミスターシービー | |
1984 | シンボリルドルフ | 1991 | トウカイテイオー | |
2001 | アグネスタキオン | 2008 | キャプテントゥーレ | |
2003 | ネオユニヴァース | 2009 | アンライバルド | |
2010 | ヴィクトワールピサ | |||
2005 | ディープインパクト | 2016 | ディーマジェスティ | |
2017 | アルアイン | |||
2020 | コントレイル | |||
2011 | オルフェーヴル | 2018 | エポカドーロ | |
天皇賞(春) | 1948 | シーマー | 1955 | タカオー |
2002 | マンハッタンカフェ | 2011 | ヒルノダムール | |
2006 | ディープインパクト | 2019 | フィエールマン | |
2020 | フィエールマン | |||
2021 | ワールドプレミア | |||
NHKマイルカップ | 2001 | クロフネUSA | 2015 | クラリティスカイ |
2017 | アエロリット f | |||
優駿牝馬 | 1943 | クリフジ f | 1954 | ヤマイチ f |
1983 | ダイナカール f | 1996 | エアグルーヴ f | |
東京優駿 | 1933 | カブトヤマ | 1947 | マツミドリ |
1942 | ミナミホマレ | 1954 | ゴールデンウエーブ | |
1958 | ダイゴホマレ | |||
1984 | シンボリルドルフ | 1991 | トウカイテイオー | |
2002 | タニノギムレット | 2007 | ウオッカ | |
2003 | ネオユニヴァース | 2009 | ロジユニヴァース | |
2004 | キングカメハメハ | 2015 | ドゥラメンテ | |
2017 | レイデオロ | |||
2005 | ディープインパクト | 2012 | ディープブリランテ | |
2013 | キズナ | |||
2016 | マカヒキ | |||
2018 | ワグネリアン | |||
2019 | ロジャーバローズ | |||
2020 | コントレイル | |||
2021 | シャフリヤール | |||
安田記念 | 1985 | ニホンピロウイナー | 1992 | ヤマニンゼファー |
1993 | ヤマニンゼファー | |||
1999 | エアジハード | 2010 | ショウワモダン | |
宝塚記念 | 1966 | エイトクラウン f | 1975 | ナオキ |
1999 | グラスワンダーUSA | 2011 | アーネストリー | |
2006 | ディープインパクト | 2016 | マリアライト f | |
菊花賞 | 1941 | セントライト | 1952 | セントオー |
1949 | トサミドリ | 1956 | キタノオー | |
1960 | キタノオーザ | |||
1962 | ヒロキミ | |||
1964 | シンザン | 1981 | ミナガワマンナ | |
1985 | ミホシンザン | |||
1996 | ダンスインザダーク | 2003 | ザッツザプレンティ | |
2004 | デルタブルース | |||
2009 | スリーロールス | |||
2005 | ディープインパクト | 2016 | サトノダイヤモンド | |
2018 | フィエールマン | |||
2019 | ワールドプレミア | |||
2020 | コントレイル | |||
天皇賞(秋) | 1970 | メジロアサマ | 1982 | メジロティターン |
1971 | トウメイ f | 1978 | テンメイ | |
1999 | スペシャルウィーク | 2010 | ブエナビスタ f | |
ジャパンカップ | 1985 | シンボリルドルフ | 1992 | トウカイテイオー |
1999 | スペシャルウィーク | 2011 | ブエナビスタ f | |
2006 | ディープインパクト | 2012 | ジェンティルドンナ f | |
2013 | ジェンティルドンナ f | |||
2015 | ショウナンパンドラ f | |||
阪神JF | 1995 | ビワハイジ f | 2008 | ブエナビスタ f |
2011 | ジョワドヴィーヴル f | |||
朝日杯FS | 1976 | マルゼンスキー | 1982 | ニシノスキー |
1987 | サクラチヨノオー | |||
1997 | グラスワンダーUSA | 2008 | セイウンワンダー | |
有馬記念 | 1984 | シンボリルドルフ | 1993 | トウカイテイオー |
2005 | ハーツクライ | 2019 | リスグラシュー f | |
2006 | ディープインパクト | 2014 | ジェンティルドンナ f | |
2016 | サトノダイヤモンド | |||
旧8大競走は前身のレースを含む、f は牝馬 |
○ジャンダルムには母仔制覇のチャンスがある。母ビリーヴは新潟開催のスプリンターズSと翌年の高松宮記念を勝った名牝で、引退戦のスプリンターズSではデュランダルの追い込みにハナだけ屈して2着だった。産駒は父キングマンボのファリダットが安田記念3着などそこそこ距離をこなしてしまうのでスプリントに落ち着くのに時間がかかる場合があり、本馬も父が芝のステイヤー・キトゥンズジョイなのでスプリント戦へのデビューはこの春だった。ダンチヒ産駒の祖母グレートクリスティーヌはブリーダーズCディスタフ-G1など米G1・11勝の歴史的名牝レディーズシークレットの半妹。3歳時以来のG1挑戦となるが、格負けすることは決してない。 キングヘイローはローレルゲレイロとの高松宮記念父仔制覇のほか、今年は母の父としてディープボンドがフォワ賞-G2に勝って凱旋門賞-G1に臨む。▲ピクシーナイトもキングヘイローの娘の産駒なので、日仏で同日に偉業達成の可能性がないとはいえない。祖母の父はサクラバクシンオー、3代母の父はエイシンワシントンUSAを送ったオジジアンUSAなので、母の持つスプリントの要素は上質で濃い。父のモーリスは1600mから2000mで活躍したが、デビュー戦は京都1400mを1.20.6の2歳レコードで勝っていて、高速決着への対応可。 △レシステンシアは母マラコスタムブラダARGがアルゼンチン産。リザードアイランド×ポリグロートという珍しい組み合わせで、これはデインヒルUSA系×サドラーズウェルズ系の欧州型の配合。父ダイワメジャーは種牡馬としてはマイル専門といえる面もあるが、産駒コパノリチャードが高松宮記念-G1に、同ブルドッグボスはJBCスプリント(1400mですが)に勝った。 |
競馬ブックG1増刊号「血統をよむ」2021.10.3
©Keiba Book