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ディープインパクト産駒のマルセリーナ、ヴィクトワールピサのジュエラー、ロードカナロアのアーモンドアイ、エピファネイアのデアリングタクトと、これらはいずれも過去10年のこのレースの勝ち馬でそれぞれ父の初年度産駒だった。桜花賞-G1は若い種牡馬が力を発揮しやすいレースであるのかもしれない。デアリングタクトを送ったエピファネイアは昨年の総合サイアーランキング(JBISサーチ発表)で13位。そのひとつ上の12位には競走馬としても種牡馬としても同期のキズナがいた。賞金額にして1億8千万円の差でライバルに先着したとはいえ、キズナの弱みは産駒にG1勝ち馬のいないことだった。ランキング上位を占めるような種牡馬は大抵初年度産駒からG1勝ち馬を出すものだが、キングカメハメハは初年度産駒にG1勝ち馬は現れず、2年目からアパパネ、ローズキングダム、ルーラーシップが出た。キズナは今年のサイアーランキングで(JBISサーチ発表4月6日現在)で7位につけており、ディープインパクト後継種牡馬としては最上位にいる。ぼちぼちG1勝ち馬が出ていいころではないの?と考えるのは自然なことだ。下表はこれまでのキズナ産駒の活躍馬一覧。2歳戦から古馬まで、ダートでも芝でも、短距離でも長距離でも、活躍の場が実に幅広い。ディープインパクトとストームキャットという万能チャンピオンサイアー同士の組み合わせゆえではあるだろうし、逆にいえば万能が器用貧乏に傾いている嫌いもある。配合に関してはノーザンダンサーの5×5程度のものが多いが、サンデーサイレンスUSAの近交馬(3×4)が10頭中3頭もいて、このあたりはエピファネイア産駒のデアリングタクト(サンデーサイレンスUSA4×3)が新しく作った流れにキズナ産駒が乗っているようにも見える。◎ソングラインは母の父がシンボリクリスエスUSAなので、デアリングタクトに共通する要素が多い。母のルミナスパレードは2歳8月に芝1400mの新馬戦を勝ち、その後ダート短距離で活躍し、3勝を加えた。2017年に引退、繁殖入りして本馬が初仔となる。アグネスタキオン産駒の祖母ルミナスポイントは芝とダートの短距離で5勝を挙げ、産駒ジューヌエコールはデイリー杯2歳S-G2と函館スプリントS-G3に勝った。モハメド殿下が生産した3代母ソニンクGBがマキアヴェリアン産駒の英国産馬で、産駒にエルムS-G3などダート重賞4勝のランフォルセ、アーリントンC-G3のほかカペラS-G3などダート重賞5勝のノーザンリバー、孫に日本ダービーのロジユニヴァース、ナッソーS-G1のディアドラを送った。4代母ソニックレディは愛1000ギニー-G1、サセックスS-G1、ムーランドロンシャン賞-G1などに勝った名牝で、1歳下のミエスクと並ぶヌレエフの初期の代表産駒だった。その名牝の血は日本で最も発展し、ディアドラによって欧州に還流したことになる。 |
| キズナ産駒の活躍馬 | |||||||
| 馬名 | 性 | 生年 | 毛色 | 母の父馬 | その父系 | 備考(近交) | 主な勝ち鞍 |
| ディープボンド | 牡 | 2017 | 青鹿 | キングヘイロー | Northern Dancer | Halo 4×4 Lyphard 5×4 Northern Dancer 5×5 | 阪神大賞典-G2 京都新聞杯-G2 |
| マルターズディオサ | 牝 | 2017 | 青鹿 | Grand Slam | Mr. Prospector | Northern Dancer 5×5×5 Secretariat 5×5 | チューリップ賞-G2 紫苑S-G3 |
| ビアンフェ | セン | 2017 | 鹿 | サクラバクシンオー | Nasrullah | Northern Dancer 5×5 | 函館2歳S-G3 葵SL |
| クリスタルブラック | 牡 | 2017 | 黒鹿 | タイキシャトルUSA | Halo | Halo 4×4 Hail to Reason 5×5×5 | 京成杯-G3 |
| ファインルージュ | 牝 | 2018 | 鹿 | ボストンハーバーUSA | Nasrullah | サンデーサイレンスUSA 3×4 Northern Dancer 5×5 | フェアリーS-G3 |
| アブレイズ | 牝 | 2017 | 青鹿 | ジャングルポケット | Nasrullah | Halo 4×5 Northern Dancer 5×5 | フラワーC-G3 |
| キメラヴェリテ | 牡 | 2017 | 黒鹿 | Cozzene | Nasrullah | Northern Dancer 5×5 Secretariat 5×5 | 北海道2歳優駿LR |
| クリスティ | 牝 | 2017 | 芦 | クロフネUSA | Northern Dancer | サンデーサイレンスUSA 3×4 | 六甲SL |
| ケヴィン | 牡 | 2017 | 青鹿 | Anabaa Blue | Northern Dancer | Northern Dancer 5×5 | 若駒SL |
| ソングライン | 牝 | 2018 | 青鹿 | シンボリクリスエスUSA | Roberto | サンデーサイレンスUSA 3×4 Hail to Reason 5×5 | 紅梅SL |
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○エリザベスタワーGBの母ターフドンナは2015年のディアナ賞-G1(独オークス)を2番手から抜け出して勝った。その父ドイエンはサドラーズウェルズ直仔のキングジョージY世&クイーンエリザベスS-G1勝ち馬だが、種牡馬としてこの母のほかにはG2、G3の勝ち馬をわずかに出したに過ぎない。祖母はドイツの中〜短中距離部門担当の名種牡馬ビッグシャッフルの産駒。3代母の産駒にはリディアテシオ賞-G1のターフローズGERがおり、その産駒ロサギガンティアはスプリングS-G2に勝った。4代母の産駒ターフケーニッヒはバイエリシェスツフトレネン-G1に勝った。父のキングマンは1月に亡くなったハリド・アブドゥラ殿下の生産・所有した名マイラーで、愛2000ギニー-G1、セントジェームズパレスS-G1、サセックスS-G1、ジャックルマロワ賞-G1とG14連勝で2014年の欧州マイル路線を席巻した。ドイツ牝系に英国血統を載せた底力のある配合で、G2よりもG1で良さが出るのではないか。 ▲メイケイエールは折り合いがつけばあっさり勝っておかしくない能力を秘めている可能性がある。3代母シラユキヒメの孫が最優秀2歳牝馬で祖母ユキチャンは関東オークスなどダート重賞3勝の活躍馬。父のミッキーアイルはNHKマイルC-G1まで5連勝し、3歳後半から4歳いっぱい勝てない時期が続いたが、5歳時には阪急杯-G3とマイルチャンピオンシップ-G1を逃げ切った。父のように逃げたら折り合えるのかは分からないが、血統背景からの可能性という点ではそれもありかもしれない。 △ソダシはメイケイエールの3代母の孫。この1月に死んだ父のクロフネUSAは2018年の種付けを最後に種牡馬を引退していたので、本馬は最後から2番目の世代ということになる。ノームコアとクロノジェネシスの姉妹の母の父がクロフネUSAで、レイパパレの母の父もクロフネUSAということで、このところの強い牝馬の大活躍のキーがこの父ということになる。クロフネUSA産駒や娘の仔は2歳戦や古馬戦に強いのに、なぜかクラシックには縁がないままここまで来た。距離適性や成長のスピードといったフィジカルな理由なのか、単なる偶然だったのか、その答えが今回で出るのかもしれない。 |
競馬ブックG1増刊号「血統をよむ」2021.4.11
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